研究課題/領域番号 |
23780209
|
研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
竹内 猛 沖縄科学技術大学院大学, その他部局等, 研究員 (60599231)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | ゲノム / トランスクリプトーム / 遺伝子 / バイオミネラリゼーション / アコヤガイ |
研究概要 |
研究対象生物であるアコヤガイの全ゲノム解読を行った。具体的には、次世代シーケンサーを用いたゲノム配列のシーケンシング、アセンブル、遺伝子モデルの作成等に携わった。これによりアコヤガイのゲノムワイドな遺伝子情報を得る事ができたので、本研究課題の最終目的である新規貝殻形成遺伝子の探索にも大いに役立てる事ができた。ゲノム解読の成果は、論文として報告を行った(Takeuchi et al. 2012, DNA Research 19, 117-130)。また、平成22年度内に得ていたトランスクリプトームデータに加え、平成23年度もアコヤガイ幼生及び成体複数組織のトランスクリプトームシーケンスを行った。最初の計画では貝殻形成期前および形成中の幼生の遺伝子発現データのみを比較する予定であったが、より多くの発生段階・組織の発現情報を得る事ができたので、貝殻形成期に特異的に発現する遺伝子の絞り込みを高精度で行えるようになった。ゲノムデータ及びトランスクリプトームデータを解析した結果、D型幼生期に特異的に発現する遺伝子の候補配列を79個得た。これらの配列について、機能ドメインの探索、シグナルペプチドの有無、繰り返し配列の有無等の各種解析を行った。このように、平成23年度はゲノム解読やトランスクリプトームデータの追加など、網羅的遺伝子探索の基盤となる実験・解析を主に行った。結果として、当初計画していた少数の候補遺伝子についてのクローニングや発現解析を行うまでにはいたらなかった一方、ゲノム情報・トランスクリプトーム情報を充実させる事により、新規貝殻形成関連遺伝子をゲノムワイドに網羅的探索・解析する事が可能になった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アコヤガイゲノム解読やトランスクリプトームデータの追加により、当初の計画を遥かに上回る塩基配列データを得る事ができた。特にゲノム解読の成果は、本研究にとどまらず、今後アコヤガイ研究においてきわめて重要なデータベースとなることは疑いの余地がない。本研究においては、より網羅的かつ高精度な情報に基づいて新規貝殻形成関連遺伝子の探索を行う事ができた。実際に、トランスクリプトームによる発現パターン解析や演繹アミノ酸配列の機能ドメイン探索の結果、新規貝殻形成関連遺伝子の有力候補を多数得る事ができた。
|
今後の研究の推進方策 |
当初は貝殻形成に関わる新規遺伝子を発見し、その機能を実験により詳細に解析する計画であり、研究対象は多くとも数個の遺伝子を想定していた。一方、アコヤガイのゲノム解読に成功し、トランスクリプトームも含めて膨大な遺伝子情報が得られたことにより、貝殻形成における遺伝子発現のゲノムワイドな全体像をとらえる事が可能になりつつある。そこで今後の研究方針としては、ごく少数の遺伝子の解析にとどまらず、貝殻形成に関わる遺伝子群の包括的な発現動態を明らかにすることを目的とし、マイクロアレイを用いた発現解析を行いたい。すでに様々な発生段階の幼生のマイクロアレイ実験用サンプルを得ている。マイクロアレイを用いて連続的な発現変動を解析し、貝殻形成期の遺伝子発現の特徴を明らかにしたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
マイクロアレイ実験に必要な試薬類、プローブの設計と作成にかかる費用として使用する。なお、本実験は当初の計画の予算範囲内で遂行可能である。
|