魚類養殖で問題となる病原微生物疾病に対して効果的なワクチンを開発するため、獲得免疫の成立に及ぼす魚類サイトカインの影響を解析した。 ヒラメを対象として、炎症系サイトカインの一種であるInterleukin-1 beta(IL-1β)が獲得免疫を調節する機構を解析した。まず、ヒラメIL-1βアイソフォームの構造解析を行い、本魚種において複数のIL-1βアイソフォームが免疫応答において複雑に働く可能性を示した。これらのアイソフォームのうち、特に顕著な発現変導を示したものをヒラメ筋肉中で強制的に発現させ、獲得免疫の成立に及ぼす影響を解析した。抗原タンパク質あるいはDNAワクチンとして投与した抗原遺伝子に対する特異抗体価は、IL-1βを強制的に発現させた個体において顕著に上昇することを示した。 さらに、哺乳類において獲得免疫の成立を調節する上で重要なサイトカインの1つであるIL-12に着目し、ヒラメを対象としてcDNAクローニングを行った。IL-12はp35およびp40のヘテロ2量体からなり、ヒラメでは2種類のp40が存在することを示した。さらに、IL-12ファミリー分子のEpstein-Barr virus-induced gene 3遺伝子についても同定した。これらの遺伝子は、病原微生物関連パターン分子の投与により発現変動することから、魚類においてもIL-12が獲得免疫の成立に働くことが示唆された。 また、ウイルス感染症に対する防除機構に重要なサイトカインの1つであるI型インターフェロン(IFN)の効果について解析し、解析したすべての魚種で、低い飼育水温で飼育した場合にIFNの効果が顕著に活性化されることを示した。さらに培養細胞を用いた解析により、本効果が細胞レベルで見られることを確認した。
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