研究課題/領域番号 |
23780219
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
石塚 哉史 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (70571016)
|
キーワード | 国際情報交換 / 農産物輸出 / 販路確保 / マーケティング戦略 / 中国 / 台湾 |
研究概要 |
本研究の目的は、わが国における農産物輸出の現段階と課題がいかなるものであるのかを明らかにし、今後の海外における需要創出の可能性について検討することである。具体的には、第1にわが国の農産物支援政策及び関連事業の展開過程の分析、第2に農産物輸出推進主体および対象品目の差異に留意し、包括的・総合的に検討、第3に輸出先における消費者意識とその購買行動の分析、の3点からアプローチしていく。 今年度は、上述した「農産物輸出推進主体および対象品目の差異に留意し、包括的・総合的に検討」に焦点をあてて、品目、地域、事業主体に着目し、農産物輸出の実情をマーケティング戦略を中心に分析を行った。 なお、今年度に実態調査の実施内容は以下の通りである。(1)味噌加工業者の輸出を支援する機関(平成24年6月:全国味噌工業協同組合連合会)、(2)りんご果汁輸出に取り組んでいる加工業者(平成24年6月:青研)、(3)こんにゃく製品の輸出に取り組んでいる加工業者(平成24年8月:原田食品、同年9月:石橋屋)、(4)味噌輸出に取り組んでいる加工業者(平成24年9月)、(5)本山葵輸出に取り組んでいる農業協同組合(平成24年11月)、(6)独自品種を利活用したりんご輸出に取り組んでいる卸売業者(平成25年1月)、(7)栃木県内産地の輸出支援事業の実施主体である機関(平成25年3月)これらの調査結果の内、(1)、(3)、(4)は地域農林経済学会大会(平成24年10月:大阪経済大学)、(2)は日本農業市場学会大会(平成24年7月:広島大学)において個別報告において発表した。 次年度は、国内では更に品目・事業主体の対象を拡げるための実態調査、海外では中国・台湾等にて消費動向調査を実施する計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内産地および加工食品業者等において積極的な農産物・食品輸出への取組を示している事業主体等を対象とした訪問面接調査が実施できている。 また調査対象も事業主体では団体、食品事業者、流通業者、品目では青果物(いちご、なし、わさび)、畜産物(和牛)、加工食品(りんごジュース、こんにゃく、味噌)と多種多様な形態を実態調査からフォローしており、研究の目的に掲げた日本産農産物・食品輸出の包括的・総合的な検討に近づきつつあるといえよう。 また、今年度は本研究課題の成果の一部を日本農業市場学会、地域農林経済学会、日本農業経済学会において個別報告を行うとともに、その内容を基に論文投稿を行った。 さらに前述の調査時において対象事例の全てから次年度以降の協力も得られることとなったため、おおむね申請内容に基づいて研究活動が進捗しているものと判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き平成23年度、同24年度と同様に国内で輸出事業に取り組んでいる産地を対象とした訪問面接調査を積極的に実施する予定である。特に生鮮食品、加工食品を問わず、積極的な輸出事業を継続して展開している事業主体を網羅することができるように更なる範囲の拡大に取り組んでいく。このことは、東日本大震災・福島県第1原子力発電所事故以降に海外において日本産農産物・食品の輸出が低迷したことを鑑みると、現在の取り巻く環境は厳しい局面におかれている。こうした状況下であるにも関わらず震災前後に継続して輸出実績をあげている事業主体に関しては海外での販路確保に関する確固たるマーケティング戦略が構築されているものと想定されるため、今後の輸出戦略を検討する上で有益な資料となるものと考えられる。 それに加えて、今年度は中国、台湾等の輸出相手国における日本産農産物の消費動向を把握するために調査を実施する予定である。前述の国・地域を対象としている理由は、①中国は現在の輸出量は限定されているものの、今後の市場開拓の可能性を有していること、②台湾は現在の有力な輸出相手国であること、があげられる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
基本的には、平成23年度科学研究費助成事業交付申請書の助成金額の記載欄における金額の配分内容を踏まえて、日本国内で積極的に取り組んでいる産地(地方自治体、生産者、農業法人)、農協、企業等を中心に訪問面接調査を実施する。 また、近年の経済成長目覚ましい中国沿海地域(北京、上海、広州等)および台湾(台北、台南)において日本産農産物の消費動向(消費者意識、購買行動)に関する調査を実施する。 なお、平成24年度に繰り越した助成金に関しては、輸出相手国での消費動向に関する現地調査の規模を拡大することによって使用していく方針である。
|