本研究の目的は、わが国における農産物輸出の現段階と課題がいかなるものであるのかを明らかにし、今後の海外における需要創出の可能性について検討することである。具体的には、第1にわが国の農産物支援政策及び関連事業の展開過程の分析、第2に農産物輸出推進主体および対象品目の差異に留意し、包括的・総合的に検討、第3に輸出先における消費者意識とその購買行動の分析、の3点からアプローチした。 今年度は、一昨年度、昨年度の分析結果を踏まえて、前述の第2及び第3の分析に力点をあて関連するフィールドワークを積極的に実施した。なお、今年度実施した現地調査の内容は、以下の通りである。①東日本大震災・福島原発事故(以下、「震災・原発事故」と省略)以降の日本産農産物・食品輸出に係る産地訪問面接調査(平成25年7月:豚肉(宮城県)、日本酒(青森県)、りんご果汁(青森県))、②輸出相手国・地域における日本産農産物・食品の評価に関する訪問面接調査及びアンケート調査(平成25年8~9月:中国・上海市、同年9月:台湾・台北市)以上の調査を通じて、第1に震災・原発事故直後は東北産農産物・食品の輸出は大幅に減少したものの、昨年度から回復基調にある点、第2に震災直後から現在にかけて被災地から遠隔地にある九州産の農産物・食品の輸出が増加しており、輸出相手国・地域において産地間競争が発生しつつある点、の2点が明らかとなった。 これらの内容は、日本農業市場学会大会(平成25年6月:新潟大学)、食農資源経済学会大会(同年9月:別府大学)、地域農林経済学会大会(同年10月:岡山大学)の個別報告において発表を行った。
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