研究課題/領域番号 |
23780220
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
氏家 清和 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30401714)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 食品安全性 / 放射性物質汚染 / 消費者行動 |
研究概要 |
本年度は食品表示における費用便益分析のデータを収集しつつ,基礎的な分析を行い,合わせて費用便益評価モデルのプロトタイプの構築を試みた. 農産物の放射性物質汚染表示の問題を事例として取り上げた.東日本大震災は東京電力福島第1原子力発電所において放射性物質が環境に大量漏出する深刻な原子力災害をも引き起こした。その結果、発電所が立地している福島県、ならびにその周辺各県の農畜水産物に対する放射性物質汚染が懸念される事態となり、社会的な不安が大きい. 本研究においては,汚染表示がもたらす消費者便益の評価について,仮想的なケースをいくつか提示したうえで,年度内に4回の表明選好法による消費者調査を継続して行い,過酷な放射性物質漏出事故が生じた状況のもとでの,周辺農産物に対する消費者評価の推移について調査した.その結果,事故後1年経過しても,消費者評価には大きな改善が見られず,依然として消費者の間に放射性物質汚染に対する恐怖感が存在していることが明らかになった.また,汚染の程度を詳細に表示することによって,消費者の不安感を抑える可能性を指摘した.さらに,年齢が若いほど,汚染に対する恐怖が高いということ,地域を応援しようという利他性が,汚染に対する評価を変化させる可能性も指摘することができた. 当初申請時の状況では,震災の発生を想定したものではなかったが,分析事例として放射性物質汚染を取り上げることで,本研究目的を達成できるだけではなく,風評被害の発生メカニズムに接近できるという,本邦が抱える大きな問題に資することが出来ると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の発生を受け,当初想定した事例とはことなる事例を分析対象としているが,調査は順調に進んでおり,研究目的は概ね達成できると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
収集した消費者行動データについて,より詳細に分析を行い,精緻なモデルの構築に努める.合わせて,行政文書等の収集を行い,政策決定過程の分析に着手する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
東日本大震災の発生による研究対象事例の変更にともない,本年度収集予定のデータを来年度に収集することとした.なぜならば,消費者行動の蓄積には一定程度の時間が必要だからである.意識と行動の両面から消費者行動の分析を進めるため,事故後の実際の消費データの蓄積をまち,繰り越した費用を利用して次年度においてこれらのデータを収集する.
|