本年度も昨年に引き続き農産物の放射性物質汚染に対する消費者評価の調査を行った.京浜ならびに京阪神の一般消費者を対象として,福島第一原発近隣県産の農産物に対する評価の推移を計測した.その結果,京浜地域において,いわゆる風評被害に該当すると解釈される産地評価については福島県産ならびに近隣県産ともに軽減傾向が継続して見られるものの,福島県産の農産物に対しては,依然として忌避感が存在していることが明らかになった.一方で,京阪神地域においては,減少トレンドは弱く,現在もかなり強い忌避感が残っていることが示唆された.両地域とも,汚染に対する恐怖感は依然として高く,これまで行われてきたリスクコミュニケーションの効果が必ずしも見られないことが示唆された.さらに,2012年4月に行われた安全基準の厳格化による効果は改訂直後には特に京浜地域において限定的ではあるが観察された.しかし,その効果は徐々に消失し,2014年時点では改定前とほぼ同様の水準に戻っており,消費者心理への影響が必ずしも持続していないことが示唆された.さらに本年度は流通企業による汚染対策について取りまとめた.多くの企業において,取引先と消費者との板挟みにあいつつも,原発周辺地域産の農産物の取り扱いについて,安全基準を独自に設定していることが明らかとなった.
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