研究課題/領域番号 |
23780221
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
霜浦 森平 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (40372354)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 農業地域計画 / 農村ツーリズム / 農村経済多角化 / 国際比較 / アイルランド |
研究概要 |
本年度は,以下の3つの研究を実施した. 第1に,都市住民の農村ツーリズムの目的地選択において,地域資源に関する条件,宿泊施設の設備やサービスの条件の2つがどれくらい影響を及ぼしているのかについて,アンケート結果から分析した。分析では,アイルランドとの比較により行なった。研究の意義としては,アイルランドとの比較分析を通して,わが国における都市住民の農村ツーリズムの目的地選択の特徴を相対的に把握できたことを指摘できる。 第2に,兵庫県豊岡市における「コウノトリ育む農法」の取り組みを事例とし,地域の多様な主体が一体となって行なう「多主体連携型地域環境保全」に対する担い手農家の意識について考察した.「育む農法」に取り組む農家は,農法の実践のみでなく,地域の主体(地域・学校・消費者・行政)との連携による地域環境保全活動,農業関連ビジネス(地産地消,交流体験活動,食品加工など)などの接点領域との連携・協働を深めている.こういった事業の多面的展開の条件を政策的に考える際の有用な情報を,本研究から得られた. 第3に,アンケート分析により,沖縄観光において訪問客が食・農に関する観光資源をどのように評価しているのかについて,リピーター訪問客に着目して考察した.分析では,沖縄観光において訪問客が重視する条件(「地元農産物や郷土料理」,「旧所・名跡・郷土文化」,「自然景観・景勝地」,「アウトドア・スポーツ」)の相対的重要度を一対比較法を用いて算出し,沖縄への訪問回数の違いが重要度に及ぼす影響を考察した.ニューツーリズム(農村ツーリズム,エコツーリズム,産業ツーリズムなど)が新たな産業として注目を集めているが,本研究成果は,ニューツーリズムの主要な顧客となり得るリピーターの特性を需要特性を把握できた点において,その意義を指摘できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,日本とアイルランドを事例として,(1)農村ツーリズムによる農村経済多角化の前提条件に関する調査(各論研究(1)),(2)農村ツーリズムの需要/供給に関する調査(各論研究(2))の二段階に分けて,調査研究を行なおうとしている.各論研究(1)では,農村ツーリズムによる農村経済多角化の前提条件について,社会条件,地域経済条件,制度・政策条件に着目しながら実態把握を行なわれる.各論研究(2)では,各論研究(1)を踏まえて,農村ツーリズムの需要/供給に関する調査が行なわれる.需要サイドと供給サイドの両面から,農村経済多角化に寄与しうる農村ツーリズムの需要拡大の条件,供給のしくみのあり方を明らかにすることを,本研究の最終的な到達点としている.以上の研究計画を実現するため,本申請研究では以下に示す具体的な検討課題を設定している.(1)農村ツーリズムによる農村経済多角化の前提条件に関する調査(各論研究(1))(1)社会条件(一般的なツーリズムの動向/訪問客の観光スタイルの状況/余暇条件/農業・農村に対する社会的認識)(2)地域経済条件(農村ツーリズムと地域産業の連関状況)(3)制度・政策条件(農村ツーリズムに関する法律・制度・規制の状況)(2)農村ツーリズムの需要/供給に関する調査(各論研究(2))(1)需要サイド(農村ツーリズムの需要構造/農村資源に対する選好構造/農村経済多角化を促進する観光行動の条件)(2)供給サイド(農村経済多角化のための経済条件・経営条件) このうち,本年度に実施した研究は,各論研究(2)に該当する.上記の研究計画の中での位置づけとの関係から考えると,当年度実施研究の内容や得られた結果はほぼ整合的である.ただし,アイルランドにおける研究については,追加的な調査の必要性を感じている.この点を考慮して,「おおむね順調に進展している」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は,以下の研究を予定している. 第1に,アイルランドの各論研究(1)を実施する.現地調査日数は,10 日間を予定している.行政機関・研究機関をはじめとする農村ツーリズムの関連組織への訪問,ヒアリングを行ない,農村ツーリズムによる農村経済多角化の前提条件に関する情報収集を行なう.さらに,2011年度に行なった各論研究(2)に関連する統計資料の収集について,海外調査協力者(メアリー・コーリー准教授,アイルランド国立大学ゴールウェイ校)の協力を得ながら進める.また,この調査では, EUの農村開発政策の1つであるLEADER プログラムを導入している農村ツーリズム事業体の代表者へのヒアリングを実施し、アイルランドにおける農村ツーリズムによる農村経済多角化の課題を把握する予定である。 第2に,2011年度に行なった調査結果の一般化に向けた作業を行なう.、農村ツーリズムによる農村経済多角化に関する既存研究の整理を行ないとともに,観光経済学、環境経済学、社会心理学の分析ツールを整理する.
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次年度の研究費の使用計画 |
国内旅費:300,200円,海外旅費:272,790円,物品費:477,010円,人件費・謝金:50,000円,その他:0円計1,100,000円
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