研究課題/領域番号 |
23780221
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
霜浦 森平 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (40372354)
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キーワード | 農業地域計画 / 農村ツーリズム / 農村経済多角化 / 国際比較 / アイルランド |
研究概要 |
本研究では、日本とアイルランドの国際比較分析を通して、農村ツーリズムによる農村経済多角化の課題と方向性を解明することを目的としている。研究は、主に総論研究、各論研究の2つのパートから構成されている。総論研究では、既存研究や関連分野の文献を検討し、各論研究を行なうための分析フレームワークの構築が行われる。各論研究として、(1)農村ツーリズムによる農村経済多角化の前提条件に関する調査、(2)農村ツーリズムの需要/供給の実態について調査が行われる。 本年度は、各論研究(2)を中心に調査・研究を行なった。具体的には、国内事例として沖縄観光を取り上げ、アンケート調査結果から沖縄訪問客の食・農資源の評価の特徴を考察した。特に、リピーターに着目し、沖縄県への訪問回数、および訪問経験の有無が食・農資源の評価に及ぼす影響を分析した。分析の結果、沖縄観光において、リピーターは食・農資源に対して相対的に高い評価を行なっていること、リピーターを増やす上で食・農資源が重要な機能を果たし得ること、リピーターの食・農資源に対する評価は、社会的属性、訪問回数、観光スタイルにより異なることが示された。訪問客の属性や観光の志向性に応じたリピーターへの働きかけの必要性について示唆された。この結果については、「沖縄観光における地域農産物と郷土料理に対する訪問客の評価:リピーターに着目して―」(霜浦森平・中村哲也・丸山敦史『2012年度日本農業経済学会論文集』、2012年、pp。130-137。)として公表された。一方、国外事例として、アイルランド西部条件不利地域の農村ツーリズム(ファーマーズマーケット、農家民宿)を取り上げ、その実態調査を行なった。実態調査は、関連統計資料の収集、担い手への聞き取り調査から構成されている。得られたデータについては、現在、分析を行なっており、来年度以降に公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、日本とアイルランドを事例として、①農村ツーリズムによる農村経済多角化の前提条件に関する調査(各論研究(1))、②農村ツーリズムの需要/供給に関する調査(各論研究(2))の二段階に分けて、調査研究を行なおうとしている。各論研究(1)では、農村ツーリズムによる農村経済多角化の前提条件について、社会条件、地域経済条件、制度・政策条件に着目しながら実態把握を行なわれる。各論研究(2)では、各論研究(1)を踏まえて、農村ツーリズムの需要/供給に関する調査が行なわれる。需要サイドと供給サイドの両面から、農村経済多角化に寄与しうる農村ツーリズムの需要拡大の条件、供給のしくみのあり方を明らかにすることを、本研究の最終的な到達点としている。以上の研究計画を実現するため、本研究では以下に示す具体的な検討課題を設定している。 (1)農村ツーリズムによる農村経済多角化の前提条件に関する調査(各論研究(1)) ①社会条件(一般的なツーリズムの動向/訪問客の観光スタイルの状況/余暇条件/農業・農村に対する社会的認識)②地域経済条件(農村ツーリズムと地域産業の連関状況)③制度・政策条件(農村ツーリズムに関する法律・制度・規制の状況) (2)農村ツーリズムの需要/供給に関する調査(各論研究(2)) ①需要サイド(農村ツーリズムの需要構造/農村資源に対する選好構造/農村経済多角化を促進する観光行動の条件)②供給サイド(農村経済多角化のための経済条件・経営条件) このうち、本年度に実施した研究は、各論研究(2)に該当する。上記の研究計画の中での位置づけとの関係から考えると、当年度実施研究の内容や得られた結果はほぼ整合的である。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、2012年度に行なったアイルランド調査から得られたデータについて、海外調査協力者(メアリー・コーリー准教授、アイルランド国立大学ゴールウェイ校)の協力を得ながら、整理・分析を進める。また,調査結果について、調査協力者との打ち合わせ、補足資料の収集を目的として、アイルランド国立大学ゴールウェイ校への訪問を予定している。 第2に、2012年度までに行なった調査結果の一般化に向けた作業を行なう。農村ツーリズムによる農村経済多角化に関する既存研究の整理を行ないとともに、観光経済学、環境経済学、社会心理学の分析ツールを整理する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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