研究課題/領域番号 |
23780222
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 浩敬 東京大学, サステイナビリティ学連携研究機構, 特任講師 (50451901)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 種苗産業 / インドネシア / 農業技術普及 / 農業技術進歩 / 農業試験研究開発 / 国際多国籍種苗企業 |
研究概要 |
本研究は主にインドネシアを対象に、i)多国籍企業の成立に関する理論モデルを応用・修正し、国際多国籍種苗企業の開発途上国への進出メカニズムを分析する、ii)進出先国・地域でのスピル・オーバー効果の有無とその経路、公的部門との連携について分析し、国際多国籍種苗企業の海外進出メカニズムとその進出先国・地域での農業生産に与える影響を明らかにすることを目的としている。本年度は、農家・種苗企業・公的機関への聞き取り調査により、現地農業の構造、種苗産業構造について概要の把握を行うとともに、関連データの収集、既存研究の整理を行った。インドネシアの食料自給は改善されているが、生産性の向上が最重要課題であり、多くの農家は質よりも生産性の高い品種を選択している。新品種や、その生産に関する技術は、政府のプログラム含めコミュニティ内の生産者組合を通じ獲得する例が多いが、近年では、多国籍種苗企業含め、民間企業が大きな役割を果たしている。流通種苗の品質保持のため認証種苗制度が導入され、生産性の改善がみられたが、一方で認証を得ない種苗もコミュニティ内で流通している。種苗産業一般にみられる傾向であるが、インドネシアにおける民間部門の種苗開発は、規模の経済性から少数の企業に集中する傾向がある。さらに種苗販売に関する認証が、相対的に大規模な種苗企業の取得が容易な傾向にあり、結果として種苗産業の寡占化が予想される。また、民間部門で開発される種苗は、利潤動機から、Hybrid Rice・Corn、野菜、園芸作物、果樹の種苗開発・生産へシフトしている。多国籍種苗企業の参入は現地種苗企業との業務提携の形でなされる一方、提携解消の動きなども見られ、今後競争は激化していく可能性が示唆される。さらに、インドネシア種苗企業自体、他国への種苗輸出を行うなどしており、中所得国の国際種苗産業への参入による国際競争の激化が予測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、主にインドネシアを対象に多国籍企業の成立要件に関する理論モデルを応用・修正し、国際多国籍種苗企業の開発途上国への進出メカニズムを明らかにすることを目的とした。本目的は、次年度も継続予定であるが、その基本となる既存研究の整理、データの収集、現地調査による現状の把握は著しく進展している。また、それらを用いたパイロット的な分析を行っており、今後、これをさらに精緻化し、インドネシアにおける国際多国籍種苗企業の同国への進出メカニズムを明らかにしていく。以上より、本研究は、当初の目的を概ね達成している、と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、国際多国籍種苗企業の直接投資が進出先国・地域の農業生産性に与える影響についてマクロデータ(国・地域または産業レベル)を用いた実証分析により明らかにすること、およびミクロデータ(企業または事業所レベル)を用い、スピル・オーバー効果の有無や経路を含むより詳細な農業生産性への影響を明らかにすることを目的としている。そのため次年度は、まず、本年度に引き続き関連するデータの取得を目指す。次に農業生産性への影響を把握するため、稲作を事例に、情報の伝播に関する現地調査を行う。なお、実際の調査にあたっては、本年度同様、ボゴール農科大学の協力を仰ぎながら行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、マクロデータ(国・地域または産業レベル)、ミクロデータ(企業または事業所レベル)を用いた分析を行うことから、これらの申請・購入を行う。関連するデータについてはインドネシア統計局に所在が確認されていることから、同局へ訪問し申請を行う。そのため本件に関する旅費、物品費を使用する。 また、農業生産性への影響を把握するため、稲作を事例に情報の伝播に関する現地調査を行うことから、旅費および調査に関わる物品費、調査協力のための謝金を使用する。 以上に加え、データ解析用のデータストレージ、PC、および関連書籍・資料の購入のために物品費を使用する。 以上が次年度の主な研究費の使用計画である。
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