インドネシアにおけるイネを含む種苗開発は、規模の経済から少数の企業に集中している。これに加え、種苗の品質を保証する種苗認証制度が導入された結果、公的機関により認証を得られる企業が限られるため、種苗産業全体として寡占化が進展する傾向にある。民間企業の種苗開発については、利潤動機からハイブリッド・ライス、ハイブリッド・コーン、野菜、園芸作物、果樹が嗜好されている。Syngenta等の多国籍種苗企業も参入してきており、現状では現地企業との業務提携の形でなされることが多い一方で、提携解消の動きなどもみられ、今後、競争は激化していく可能性が指摘できる。また、フィリピン等への周辺国への種苗の輸出を行うとともに、さらなる輸出拡大を志向する企業も多く、今後、こういった傾向はさらに進展すると考えられ、インドネシアをはじめとする中所得国の国際種苗産業への参入がさらなる国際競争の激化を招くと予想される。 農家レベルでの種苗獲得については、主に、コミュニティ内の生産者組合を通じて獲得する場合が多い。生産技術については政府が提供するField Schoolプログラムをはじめとする政府の技術普及プログラムや、コミュニティ内の篤農家からの情報提供、あるいは民間企業の営業の一環として情報提供がなされる。インドネシア全体としては、過去に食糧自給を達成しているものの、未だ安定しているとはいえず、質よりも量、すなわち生産性の増大に主眼が置かれ、そういった品種が選択されている。イネを例にとると、コストの問題からハイブリッド・ライスを導入している例は少ない。農家調査により、イネを事例とした種苗選択による農業生産性の違いを検証した結果、生産性が高い農家ほど複数の品種を組み合わせていることが明らかとなった。すなわち複数の種苗を組み合わせることで、気候、病虫害や市場の変動といったリスクに対応していることが指摘できる。
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