研究課題/領域番号 |
23780223
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
森 久綱 三重大学, 人文学部, 准教授 (80362333)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 食品循環資源 / 飼料 / 自家配合飼料 / 需給調整・接合システム |
研究概要 |
本研究は、食品循環資源の飼料利用における需給接合・調整システムに注目し、その流通システム確立における課題について実践的に解明することを目的としている。 本年度は、酪農・畜産経営の多様性(飼養規模、労働力、自給飼料の有無等)と、食品循環資源の調達実態(種類、調達経路、価格、配合・給与システム等)との相関をアンケートおよびヒアリング調査に基づき整理し、流通システムにおける隘路析出を目的としていた。しかしながら、震災の影響により北関東・東北での調査が困難となったため、三重県名張市に立地する肉牛肥育経営を事例に、食品循環資源の調達システムの実態把握と隘路析出を試みた。当該事例は中小規模に分類され、一般的には食品循環資源の利用に消極的な特徴を有しているが、近隣に排出事業者が少ないなか、多様な食品循環資源を調達し、自家配合飼料として給与している点で希有な事例となっている。 特徴的なことは、大規模層では直接取引によって食品循環資源を調達する一方で、中小規模層では飼料卸を窓口としなければならないことである。その要因として取引ロットや与信問題などの市場制度的要因や、廃棄物の適正処理問題もあるが、食品循環資源が飼料卸において販売促進ツールに位置づけられていることも要因となっている。すなわち、希望する食品循環資源を確保している飼料卸からの既存飼料調達が条件となっているのである。多様な食品循環資源を基本とする自家配合飼料利用の場合、多くの飼料卸との取引が求められる。これは一方で、飼料卸を競争させることで有利な条件を引き出すことが可能となるが、他方で多少割高な既存飼料であっても調達せざるを得ないという事態をもたらしている。また、需給が逼迫する食品循環資源を新たに調達または量の拡大を図る場合、既存需要者との関係が悪化するなど、調整システムの課題も浮かび上がってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、東日本震災の影響により、食品循環資源の飼料利用が活発な北関東・東北における調査が不可能であった。このため、当該地域における調査を次年度に実施することとし、それを補完する調査を三重県名張市の肉牛肥育経営にて行った。本年度の研究課題すべてを代替することは不可能であったが、比較的食品循環資源の利用割合が低い中小規模層における隘路について、既存研究では指摘されておらず、また本研究計画段階では視野に入れていなかった飼料卸との関係から解明することができた。ただし、本事例だけでこれを結論づけることは困難であることから、より多様な酪農・畜産経営への調査に基づき、当初予定していた解明課題に加えて考察していく必要がある。以上が、本研究の進捗状況が「やや遅れている」とした理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度夏頃に実施予定であったが、震災の影響でヒアリング調査が不可能であったことが主たる要因となっている。代替措置として影響が比較的少ないと推察された地域での調査を試みたが、酪農・畜産経営でのエサの放射能汚染・風評被害に対する警戒感が強く、十分な協力を得ることができなかった。調査協力の窓口となる生産者団体担当者との協議の結果、放射能汚染・風評被害などの対策が図られた段階で再度実施することとなった。 安全基準値の設定および検査体制の整備も図られつつあることから、次年度は本年度実施できなかったヒアリング調査を実施する。ただし復興段階にある酪農・畜産経営も多数あることを勘案し、当該地域での調査を若干縮小し、それを補完するため、他地域でも調査を予定している。 また、次年度研究計画との兼ね合いから、調査活動の合理化を図る必要が求められることから、郵送方式によるアンケート調査などで生産者団体の協力(配布・回収作業、結果入力作業およびヒアリング調査対象酪農・畜産経営との日程調整などの実務的作業)を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、本年度実施できなかった調査を実施しながら、次年度の研究計画の遂行を予定している。したがって、「次年度使用額」に記載された研究費のすべてと、次年度の研究経費の一部(調査対象地域の一部追加のため)を充当する。 また、調査活動の合理化を図るために、実務作業の一部を調査協力窓口となる生産者団体に依頼する。この経費については次年度の研究費で充当するが、生産者団体が独自に実施する調査とセットで調査票の配布・回収を行うなどして、費用の低減を図る予定である。したがって、次年度の研究費の一部を本年度予定していた研究活動にも充当することになるが、その負担は軽微になることが予想されることから、次年度の研究には大きな影響はない。 以上のことから次年度の研究費は、ほぼ研究計画どおり配分することとなる。次年度は海外調査も予定していることから、本年度予定していた国内調査とあわせて、旅費ならびに資料収集がその中心となる。
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