研究課題/領域番号 |
23780223
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
森 久綱 三重大学, 人文学部, 准教授 (80362333)
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キーワード | 配合飼料 / 食品循環資源 / エコフィード / 自家配合飼料 |
研究概要 |
本研究の目的は、食品循環資源由来飼料の流通システムについて、課題析出とその確立の方途を実証的に提示することにある。 わが国における酪農・畜産の特徴が、輸入穀物に強く依存した配合飼料への偏重=いわゆる「加工型」酪農・畜産にあることは諸研究において指摘されてきたところである。とりわけ、生産費に占める流通飼料費の割合が高位であること、すなわち経営外部の要因に起因する価格不安定化の克服は、昨今の穀物市況および今後の穀物需要動向を勘案すれば、喫緊の課題として位置づけることができる。この克服の方途として食品循環資源の飼料利用が試みられている。 こうした背景から、食品循環資源の飼料利用は、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」の制定もあって、昨今急速に拡大してきている。しかしながら、その実態は一部の食品循環資源に需要が集中する状況となっている。これは、排出時期/量の季節変動および腐敗問題への対応(保存/調整)が必要となるほか、商取引における煩雑化などの隘路(取引ロットなど)に起因している。 したがって、上記の流通システムにおける課題の克服が不可欠であり、その方途を提示することは、わが国の酪農・畜産の安定的な発展において重要な位置を占めていると考えられる。 24年度は、食品循環資源由来飼料を積極的に利用する畜産経営を事例として、そこでの隘路と対応について整理・検討をすすめたほか、配合飼料市場との関係を示すため、既存諸研究の再整理を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、国内および国外における食品循環資源の飼料利用の実態を把握し、その流通システムにおける隘路の析出と克服の方途を明らかにすることを目的としている。24年度については国内の事例調査を中心に研究を進めてきた。計画では24年度にオランダにおける食品循環資源の配合飼料原料としての利用について調査を行うこととなっていたが、研究を進めるなかで英国、ドイツにおいても食品循環資源の飼料利用が積極的に進められており、とりわけ英国ではわが国と非常に類似した状況での利用が進められていることが確認されたことから、オランダから英国、ドイツに変更して調査を行った。 オランダについては、国外からの食品循環資源の調達が積極的に行われており、東南アジア諸国からのジュース粕、果実缶詰製造粕などの調達が確認されたことから、24年度は英国、ドイツに加えて東南アジア諸国における食品循環資源の発生状況を把握するため、ベトナムでのヒアリング調査を行った。 したがって、研究計画書に記載したスケジュールに一部変更があったものの、24年度における本研究の目的はおおむね達成されていると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は本研究の最終年度となることから、前年度までの研究結果を踏まえた総括的な研究となる。ただし、前年度までの調査を補強する必要があることから、国内での事例調査に加えて、国外の事例調査(英国、ドイツ、オランダ)を引き続き進める必要がある。これら3カ国における食品循環資源の飼料利用の実態調査から、わが国における課題克服についての方途について考察を進めていく。 英国での調査については、24年度の現地調査を通じて、政府系酪農支援組織DairyCoおよびUniversity of Reading からの調査協力を得ることができたことから、25年度調査においても協力を得ることとなっている。またオランダについては、Wageningen Universityの協力を得ながら合わせて事例調査を行う予定である。ドイツについては24年度調査で調査事例とした酪農家とワイナリーを軸に調査を実施する予定である。 研究計画段階ではオランダのみを海外調査事例の対象としていたが、対象国を拡大したため予定よりも調査および調査結果整理に時間を要することが予想される。これへの対応として現地協力者にはヒアリング調査のコーディネートのほか、統計資料等の整理を担当してもらうこととなっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度については、単年度ではほぼ予定額で研究を遂行したが、23年度の残額が繰り越された状況となっている。ただし25年度で欧州3カ国の現地調査を予定しているほか、東南アジアからの原料調達についても追加的な調査が必要となることも想定されることから、25年度予算とあわせて残額についてはこれらに充当することを予定している。 国外の調査事例が増加したものの、欧州での調査は比較的近隣となることから、若干の費用および時間が増加するにとどまる。したがって、研究計画を若干修正する程度で、研究を遂行するにあたって、現地でのコーディネートならびに統計資料の整理などで十分対応が可能となっている。
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