研究概要 |
食品循環資源の流通システムにおいて、需給調整・調整機能の整備が不可欠である。比較的大規模な排出事業者および酪農・畜産経営では、それらを独自に双方の取引関係のなかで構築している。しかしながら、排出量または需要量の少ない中小規模層では、コスト,労働力の制約のほか、量的制約から独自に取引関係の構築を行うことが困難な状況となっている。 他方、飼料卸は、飼料価格の高騰および酪農・畜産経営の減少にともなう飼料需要の減少から、需要者の確保が課題となっている。従来は配合飼料が取引の中心であった飼料卸において、需要者確保を目的に、食品循環資源を取り扱うようになっている。 本研究では、愛知県に立地する中堅飼料卸と養豚経営を事例に、取引関係構築要因および食品循環資源の需給接合メカニズムの解明を試みた。飼料卸における食品循環資源は、配合飼料や輸入粗飼料の取引量固定・拡大のための手段であり、収益源としては位置づけられていない。しかしながら、酪農経営における自給飼料や独自に調達する食品循環資源などに応じた自社ブランドTMRにおけるきめ細かな混合設計の変更を行うなど、これまでは需要量や労働力などの要因から、食品循環資源を活用できない経営においても、選択の幅を広げる可能性を内包している。 取引先の一つである養豚経営では、独自に調達する食品循環資源のほか、飼料卸からも一部の食品循環資源を調達している。比較的需要量の多い経営ではあるが、排出事業者における排出量が大きく、独自の調達には限界があったためである。また、飼料卸からは指定配合飼料も調達しているが、食品循環資源の調達量に応じて配合設計を変更できることも、食品循環資源の利用を担保する要因となっている。 多様な食品循環資源を飼料として通年利用するためには、既存飼料との調整機能が不可欠である。飼料卸の利潤獲得行動もその一助となっている。
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