研究課題/領域番号 |
23780226
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
工藤 春代 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60452281)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 食品安全 / 政策実施の検証 / 政策評価 / ドイツ |
研究概要 |
研究課題[1](食品監視体制の現状/課題と改善点の提示)および課題[2](政策措置の有効性評価に関する検討とその手法の提案)の双方に関連して、公共政策学や法学、行政学分野における政策実施や政策評価の先行研究を収集した。 その上でH23年度には、主に課題[1]に対応するヒアリング調査を実施した。国内においては、食品生産現場での衛生監視および指導に関するセミナーに参加し、食品工場監査の現状や問題点に関する情報収集を行った。またH23年9月にドイツでのヒアリング調査を実施した。ドイツでは食品事業者への監視指導の頻度決定方法が連邦レベルで統一して定められている。各州が施策の実施と監視に責任を持つため、州の食品安全担当部局において、食品法の実施に関する監視の仕組み(人員や組織など)や現場での問題点についてヒアリング調査を行った。州によって仕組みが異なるため、ノルトライン・ヴェストファーレン州、バイエルン州、ハンブルク州の3州を対象とした。また監視の結果は一部連邦レベルで集計されるが、結果の伝達方法について、連邦消費者保護食品安全局でヒアリングを行った。さらに食品のサンプル検査に関しては州ごとにサンプル決定数の方法が異なっており、その現状と課題についても聞き取りを行った。 以上の成果については総説論文にとりまとめ『フードシステム研究』に投稿しており、現在審査中である。 研究課題[2]に対応して、EUレベルの食品衛生規則の実施状況や、問題点の検討を行っているEUの政策文書を入手し、整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の計画では、本年度は、研究課題[1](食品監視体制の現状/課題と改善点の提示)および課題[2](政策措置の有効性評価に関する検討とその手法の提案)に対応するヒアリング調査を日本国内において実施する予定としていた。しかし、H23年度の前半には放射性物質問題への対応もあり、国内の食品安全行政関連機関への訪問調整が難航したため、ドイツにおける調査を先行させた。そのため国内における、食品衛生に関する監視指導体制以外の食品安全関連法の実施および検証や監視の実態と問題点を明らかにすることができなかった。具体的には、農業生産段階での動植物衛生措置の実施と行政による検証の実態や、農産物・食品のサンプル検査およびモニタリングの現状についてである。 ただし、H24年度に予定していた研究課題[1]に対応するドイツでのヒアリング調査については、当初の予定より1年早くH23年度に実施することができ、食品安全関連法の実施の検証システムの現状と課題や、連邦と州の間の情報伝達の仕組み、監視結果の公表をめぐる課題について明らかにすることができた。研究課題[2]に関しては、十分なヒアリング調査を行うことができなかったものの、欧州委員会より提出されている食品衛生関連法に関する現段階の評価文書を入手している。 研究課題[1][2]ともに、先行研究の収集に関しては予定通り進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度には、先行研究の分析を引き続き進め、H23年度に実施できなかった日本国内での実態調査を中心に進める。具体的には兵庫県・京都府および調査受け入れ可能な地方自治体において、日本における食品安全関連法の実施および検証の仕組みの実態解明およびサーベイランス/モニタリングの現状と課題を明らかにする。また地方自治体および中央レベルでの、食品安全に関する政策評価の実態(基準や手法などに注目して)および課題を明らかにする。 最終年度のH25年度には、申請時の計画通り、ドイツおよび日本国内における補足的なヒアリング調査を実施する。文献研究の成果と両国での比較検討に基づき、今後必要な点に関してとりまとめを行う。 以上の成果は学会で報告し、論文投稿を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度から約2万円の予算が繰り越されている。申請時の計画では、H24年度の予算としてドイツにおけるヒアリング調査のための旅費を最も多く計上している。この予算を、繰り越し分と合わせて日本国内における中央省庁および地方自治体でのヒアリング調査に充てる予定である。文献や資料収集のための費用や、消耗品費を計上しているが、これらについては申請時の予定通りの使用を計画している。
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