本研究の課題は,中山間地域耕畜連携システムの持続性を実証的に明らかにすることにある。そのために,システムの基本モデルを導出し,経営主体間の連携関係の構築過程や参加継続条件を分析する。また,中山間地域に特有の作業条件をふまえた上で,システムの最適規模を定量的に分析する。そして,これらの分析を通じて,中山間地域耕畜連携システムの実態に整合した支援施策のあり方について検討する。 本年度は,中山間地域耕畜連携システムの持続性を規定する要因を引き続き分析した。具体的には,島根県内の集落営農組織を対象に,耕畜連携の促進条件である環境保全型農法導入の規定要因について分析した。その結果,(i)中山間地域や資源循環に取り組む自治体への立地は,環境保全型農法の導入と正の関係を有すること,(ii)組織経過年数,経営規模,地域貢献活動のひとつである集落活動の実施は,環境保全型農法の導入と正の関係を有すること,(iii)環境保全型農法の作付比率は,10a当たり売上高と正の関係を有することをそれぞれ明らかにした。 そして,3年間の成果をとりまとめ,中山間地域耕畜連携システムの持続性について,作業条件をふまえた費用分析,耕種サイドの堆肥利用条件,異なる主体間の連携構築,労務管理の特質,の側面から検討した。その結果,(i)作業条件別にみた堆肥運搬散布サービスの供給コストのシミュレーション,(ii)堆肥の継続的な施用による収益性への影響,(iii) 集落営農組織の環境保全型農法導入の規定要因,(iv)異なる主体間の連携構築におけるリーダーの役割,(v)雇用目的別の労務管理の特徴について新たな知見を得た。これらの分析結果は,学術雑誌や図書等において公表した。
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