H25年度は、英国の歴史的農業構築物保全に関寄する諸制度について学術雑誌や本の章として研究成果を寄稿あるいは出版した。 具体的には、英国とドイツの農業環境政策を比較し、今後の日本の農業環境支払制度「環境保全型農業直接支援対策」充実化のため提言できる点を政策レベルと制度レベルに分け、農業環境制度がもたらす生物多様性向上への寄与について考察した。 まず、政策レベルでは、生物多様性国家戦略と農業環境政策を横断的にリンクさせることにより、生物多様性戦略と農業環境政策の指標生物を同じにすることで関連付けがされており、農業環境政策の意義を確たるものにしていることを示した。 次に、制度レベルでは、農業環境支払の支払われ方に生物多様性保全のためのインセンティブが働くような工夫が凝らされている。そして、具体的な事例比較として、英国イングランドとドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州とニーダーザクセン州の制度を事例として、各制度の経済的根拠を整理し、それぞれの支払い方法の利点と欠点をまとめ、生物多様性向上のための日本に適した取り組みについて論文発表した。 また,歴史的構築物を保全するのみでなく維持・継承していく必要があり、それはFAOが推奨する世界農業遺産(GIAHS)登録と理念を同じくする。そのための仕組みづくりとして農村振興への仕組みづくりに、英国にある一般市民が歩くことのできるパプリック・フットパスの整備に着目した。フットパスには,レクリエーション機能のみならず,地域経済への貢献,自然保護,景観保全,また持続可能な農業生産の共存といった環境サービスの提供により,地域振興に一役担っている。英国サウスダウンズ国立公園を調査地として,フットパスの価値評価を行い,現在知られている観光を通じた経済価値以外にも、フットパスが環境サービス価値も持ち合わせることを明らかにした。
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