研究課題/領域番号 |
23780233
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
品川 優 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (10363417)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 韓国農業 / 自由貿易協定(FTA) / 米韓FTA / 直接支払制度 / FTA農業対策 |
研究概要 |
1980年代後半以降,世界の農業政策が価格支持政策から直接支払制度へと転換するなかで,韓国も1994年に制定した「世界貿易機構協定の履行に関する特別法」で,はじめて直接支払制度の導入を提起した。その後,1997年の規模化促進直接支払制度(2001年に「経営移譲直接支払制度」へ改称)を皮切りに,親環境農業直接支払制度(1999年),水田農業直接支払制度(2001年),米所得補填直接支払制度(2002年),条件不利地域畑等直接支払制度(2004年),米所得等補填直接支払制度(2005年)など矢継ぎ早に直接支払制度を展開してきた。 しかし,韓チリFTAを皮切りに,米韓FTAなど多くの自由貿易協定を締結し,本格的な農産物市場の開放に向かうなか,現在9つある直接支払制度を「経営安定型直接支払い」と「公益型直接支払い」の2つに改編する計画を打ち出し,2010年に試験事業をおこない,2012年の本格実施に向けて準備を進めている。しかしこれは,韓国のFTA対応としての直接支払制度の改編であり,現場の農家や地域に対する直接支払制度の効果・問題点等を検証した結果による改編ではない。各種直接支払制度が,各農家の経営や農業所得に与える経済的影響を明らかにした研究は,ほとんど皆無に近く,本格的な調査・研究はこれからの大きな課題である。 以上のような背景を踏まえ,本研究では韓国の直接支払制度の改編を研究テーマとし,まずは実態調査を通じて各農家・地域におけるこれまでの直接支払制度の効果とそこでの課題・問題点を析出し,直接支払制度の改編の全体像とそのねらい,従来の直接支払制度との相違点,改編する直接支払制度が現場の農家・地域に与える作用・反作用などを明らかにすることが本研究の目的である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国策研究機関である韓国農村経済研究院での韓国農政・韓国農業の実態・展望等についてのヒアリングや資料収集をおこなった。 また,韓チリFTAの影響に焦点をあて,韓国慶尚北道で果樹農家の現地調査をおこない,同FTAの影響と農家実態,また政策の検証をおこない,講演や論文にするなど一定の成果を得られたことが「おおむね順調に進展している」と自己評価した根拠である。
|
今後の研究の推進方策 |
米韓FTAの発効など自由貿易の推進により,韓国経済・農業を巡る大きな環境変化がおこっている。このような自由貿易の推進により,農業現場ではどのような作用・反作用が生じているのか,それに対する農業政策がどのように機能しているのか,あるいは問題点を抱えているのか。 そのような問題意識のもと,韓国省庁や研究機関,現場の実態調査を通じて,上記課題に取り組んでいく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1)韓国農林水産食品部や国策研究機関における直接支払制度等のヒアリング調査及び資料収集。2)米作地帯における米農家の経営状況や直接支払制度の効果,自由貿易による影響に関するヒアリング調査の実施。3)畜産農家の経営状況や直接支払制度の効果,自由貿易による影響に関するヒアリング調査の実施。4)野菜・果樹地帯における野菜・果樹農家の経営状況や直接支払制度の効果,自由貿易による影響に関するヒアリング調査の実施。これらの調査旅費や資料購入等に研究費を使用していく。
|