研究課題/領域番号 |
23780233
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
品川 優 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (10363417)
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キーワード | 韓国農業 / 自由貿易協定(FTA) / 米韓FTA / 直接支払制度 / FTA農業対策 |
研究概要 |
1980年代後半以降,世界の農業政策が価格支持政策から直接支払制度へと転換するなかで,韓国も1994年に制定した「世界貿易機構協定の履行に関する特別法」で,はじめて直接支払制度の導入を提起した。その後,1997年の規模化促進直接支払制度(2001年に「経営移譲直接支払制度」へ改称)を皮切りに,親環境農業直接支払制度(1999年),水田農業直接支払制度(2001年),米所得補填直接支払制度(2002年),条件不利地域畑等直接支払制度(2004年),米所得等補填直接支払制度(2005年)など矢継ぎ早に直接支払制度を展開してきた。 しかし,韓チリFTAを皮切りに,米韓FTAなど多くの自由貿易協定を締結し,本格的な農産物市場の開放に向かうなか,9つある直接支払制度を「経営安定型直接支払い」と「公益型直接支払い」の2つに改編する計画を打ち出し,2010年に試験事業をおこない,2012年に本格実施する予定であった。 ところが,品目の多様性や地域の多様性,さらには自由貿易協定を通じた被害品目の多様性などにより,経営単位を1つとする「経営安定型直接支払い」の実現性は困難と判断され,現在は自由貿易協定を軸とした直接支払制度の構築・改編に舵を切っている。本年度は,韓米FTAの協定内容と農業への影響,それに対するFTA農業対策の実情について考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国策研究機関である韓国農村経済研究院での韓国農政・韓国農業の実態・展望等についてのヒアリングや資料収集をおこないつつ,その不足分を早急に補うために,可能な範囲でアジア経済研究所図書館での資料集もおこなった。それらを通じて1つの論文を作成するなど一定の成果を得られたことが,「おおむね順調に進展している」と自己評価した根拠である。
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今後の研究の推進方策 |
米韓FTA及び韓EUFTAが,地域農業にどのような影響を与えているのかを現地調査を通じて明らかにするとともに,その被害に対するFTA農業対策の活用状況とその課題,そこからみえてくる韓国直接支払制度の方向性などについて明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)韓国農林水産食品部や国策研究機関に於ける直接支払制度等のヒアリング調査及び資料収集。 2)米作地帯における米農家の経営状況や直接支払制度の効果,自由貿易による影響に関するヒアリング調査の実施。 3)畜産農家の経営状況や直接支払制度の効果,自由貿易による影響に関するヒアリング調査の実施。 4)野菜・果樹地帯における野菜・果樹農家の経営状況や直接支払制度の効果,自由貿易による影響に関するヒアリング調査の実施。 これらの調査旅費や資料購入等に研究費を活用していく。
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