研究課題/領域番号 |
23780237
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
菊地 昌弥 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (30445689)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 「買い負け」現象 / 中国産冷凍野菜 / 構造変化 |
研究概要 |
これまで、日本の冷凍野菜開発輸入業者は中国産品を欲するだけ調達する事が可能であった。だが、近年、この傾向に変化が生じている。既に魚介類で指摘されている「買い負け」現象が顕在化しているのである。食料の大半を海外に依存している日本において、食料自給率向上への道筋が明確にされていないなか、同問題はわが国の「食」を脅かすことになる。そこで、本研究では先行研究において一切言及されていない中国産冷凍野菜の「買い負け」現象の発生要因の詳細を把握したうえで、同問題に対する冷凍野菜開発入業者の企業行動を解明することを目的とする。 初年度に取り組ん内容は、「買い負け」現象の実態の解明である。中国の統計資料「中国海関統計年鑑」を基に中国産冷凍野菜の輸出状況を捉えたところ、中国は日本向けに販売するといっても過言ではなかった状況から、韓国、米国をはじめとする日本以外の他国に販売する多元的なチャネルをわずかな期間で構築している。その結果、中国産冷凍野菜の日本向け輸出は相対的にも絶対的にも減少している。 ただし、それは商品全般においてみられるのではなく、残留農薬問題発生以前、取扱量が大きく、しかも日本向けが大多数を占めるという特徴を有した、いわゆる中国にとっても日本にとっても中心的な品目が対象となっている。そのため、買い負け現象はこうした品目で主に発生していると同時に、その輸入量の多さと減少の程度の大きさから日本ではすでに一定の影響を受けていると判断される。なお、同品目が対象となっているのは、中国の製造企業にとってみれば、中心的な品目は自身の経営に大きな影響を及ぼすので、残留農薬違反が日本で続出し先行きに不透明感が生じるなか、経営上のリスク回避のために優先して脱日本向けに着手せざるを得なかったことが関係している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、日本の冷凍野菜開発輸入業者とその企業の商品を製造している中国の冷凍野菜製造企業、当該商品の大口のユーザーである外食企業へ対面調査、業界の動向を明記している統計資料や専門書、そして、これまで入手してきた資料(企業のデータ)および入手予定の資料(同)を基に、実証的な手法から課題の解明を試みる。取り組む内容は、(1)「買い負け」現象の実態の解明、(2)「買い負け」現象の背景の解明(中国の冷凍野菜製造企業が日本以外の国への販路拡大に成功した要因の解明)、(3)「買い負け」現象に対する冷凍野菜開発輸入業者の対応策の解明、(4)成果の取りまとめと今後の展望の総括、の4点である。 これらの課題に対して1年に1つずつ取り組むことを予定(研究計画は4年間)しているなか、初年度に予定通り(1)の課題を解明したため、現時点ではおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に研究が進んでいることから、当初の研究計画を基本に、実証的な手法をベースに進めていく予定である。また、なるべく成果を多く公表できるように、学会報告や論文投稿を積極的に実施していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画を基本に進めていく予定ではある。しかし、日本の冷凍野菜大手開発輸入業者から現地の冷凍野菜製造企業に関する貴重な資料を入手するとともに、詳細なヒアリング調査を実施できる状況に恵まれているため、場合によっては、海外への渡航回数(旅費)を減らし、これらにかかる費用(謝金)にあてることも検討している。
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