研究課題/領域番号 |
23780237
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
菊地 昌弥 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (30445689)
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キーワード | 買い負け現象 / 中国産冷凍野菜 / 構造変化 / 主体間の関係変化 |
研究概要 |
本研究では先行研究において一切言及されていない中国産冷凍野菜の「買い負け」現象の発生要因の詳細を把握したうえで、同問題に対する冷凍野菜開発入業者の企業行動を解明することを目的としている。課題の解明に当たり本研究で取り組む内容は、①「買い負け」現象の実態の解明、②「買い負け」現象の背景の解明(中国の冷凍野菜製造企業が日本以外の国への販路拡大に成功した要因の解明等)、③「買い負け」現象に対する冷凍野菜開発輸入業者の対応策の解明、④成果の取りまとめと今後の展望の総括、の4点である。初年度においては①の解明を行った。2年目は①に関連する事項と③を解明するための研究を実施した。その結果、次のことが明らかになった。 第1に、①で解明した日本向け中国産冷凍野菜の輸出価格の高騰について大手冷凍野菜製造業者のコスト表を分析した結果、主要因は加工原料費および人件費の上昇にあった。第2に、先に示した輸出価格高騰の一因である人件費や原材料費の上昇を軽減し、廉価な冷凍野菜を調達するために、そして買い負けを回避するために事例の大手冷凍野菜開発輸入業者は、伝統産地である中国沿岸部ではなく内陸部に存在する企業から2009年より調達を試みていた。だが、着手から2年後には沿岸部地域の企業と価格面で大きなメリットを発揮できなくなっていることに加え、安全性を含めた品質管理に問題があったため、事例の企業間では既に取引が停滞している。取引停滞の要因が非伝統的な産地に共通する事項であること、また一般的にこれらの解決には一定程度の時間を要することを踏まえると、主要産地においてマイナス面での構造変化が発生しない限り、非沿岸地域を中心とした新興産地への対日輸出野菜基地のシフトは短期的には起こらないと考えられる。これらから今後も研究対象地域が中国沿岸部となること、そして中国国内でのコスト削減策にも限界があることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、本研究では課題の解明に当たり、①「買い負け」現象の実態の解明、②「買い負け」現象の背景の解明(中国の冷凍野菜製造企業が日本以外の国への販路拡大に成功した要因の解明等)、③「買い負け」現象に対する冷凍野菜開発輸入業者の対応策の解明、④成果の取りまとめと今後の展望の総括、の4点について考察を加えることを予定している。 初年度においては①を、そして2年目は①に関連する研究と③を解明するための研究に着手することができており、作業がほぼ予定通りに進んでいる。しかも、それらの成果を学会誌および学術図書に掲載される水準をもって公表している。そのため、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
作業がおおむね順調に推移していることから、今後も現状を維持するかたちですすめていく。なお、本研究において特徴的な部分は、事例企業(大手冷凍野菜開発輸入業者)に所属される方が研究協力者として加わっていることである。それによって、通常では得ることができない資料を入手できることから、課題に対して詳細な実態と論理の両面から実証的に解明することが期待できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述のように、現場の最前線にいる者に研究協力者に加わってもらうことが可能となっていることから、また、最大の対日輸出基地の付近に存在する青島農業大学の教員とも協力関係が構築できるようになったことから、日本側のデータはもちろんのこと、現地の冷凍野菜製造企業のデータや中国の統計資料も入手しやすい状況が形成されている。そのため、前年度同様、データ等の情報入手に当たり中国を中心とした海外への渡航回数を当初計画より減らし、その一方で謝金を増やすことを検討している。
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