社会的諸課題の解決や地域貢献(福祉など)に根ざした、すなわち、「社会的企業」と呼ぶことができるような農村女性起業の事例が各地で見られるようになってきている。現在の農村女性起業の発展は、現代の農村女性が置かれた地位や役割が変化していることを集約的に示すものである。 そのため、本研究では、社会的企業として捉えうる段階になった農村女性起業を、①個人(農村女性)レベル、②組織レベル、③地域レベル(「農業」と「農村生活」)という3視点から総合的に、かつ、実証的に分析しながら、農村女性起業が社会的企業として果たす役割や成立条件、課題等を検討してきた。 第一に、農村女性個人の起業活動に対する評価についてグループ経営の農村女性起業のメンバーに意識調査(参加前の活動に対する期待度、現在の活動に対する満足度等)を実施した。その結果、第1世代(活動開始当初からのメンバー)と第2世代(活動途中から参加のメンバー)の地域活性化などに対する意識は、活動を通じて高まっていること等が示唆された。 第二に、農村女性起業の地域農業へのインパクトを分析するために、原料調達と地域農業との接点を地消地消の観点から明らかにした。事例分析を通じて、地元産の農産物を優先的に調達しようとしていること、農産物の調達の有機的連携が存在していること、遠隔地から農産物を安定的に調達する際に、周辺地域の商業機能が重要な役割を果たすこと等を指摘した。地産の地理的範囲の設定も重要であるが、地元と周辺地域をベースにした安定した調達の有機的連携の構築こそが地産のもっとも要件であるべきではないかと思われる。
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