本研究では、稲作法人経営を対象として、そこでの事業主借入とみなせる役員借入金について、その実態と役割を検討した。その結果、低収益性かつ自己資本比率の低い経営においてそれら内部調達資金が多額になっていること、並びにその機能としては、投資だけでなく短期負債の返済や運転資金への充当といった様々な用途に仕向けられている実態が明らかになった。さらに、そのような内部調達資金に依存する要因として、低収益性であるが故に内部留保を行うことで自己資本を増強していくことが困難となっていることを指摘した。これらのことから、役員借入金等の内部資金調達は、経営の危機的状況に対するいわば応急手当という面では有効な対策といえるが、それに過度に依存することは根本的な問題解決の先送りになると考えられる。
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