本研究では,過剰な土壌流出によってサンゴ等の生態系への影響が深刻な沖縄地方を対象とし,土壌侵食に伴って生じる有機炭素流出に着目し,土砂・炭素の動態を現地観測および解析によって評価することを目的とした。 沖縄県石垣島のサトウキビ畑において,土砂・炭素動態に関する現地観測を実施した。その結果,不耕起状態で行われる株出し栽培区では,苗を新植する夏植え栽培区と比較して,土壌侵食量,土壌侵食に伴う有機炭素流出量,土壌呼吸量が小さかった。土壌の有機炭素含有率は株出し栽培区の方が大きく,夏植え栽培区では減少傾向にあった。また,異なる土地利用条件下における土砂・炭素動態を短期間ではあったが現地観測によって評価した。その結果,土壌侵食量および有機炭素流出量はサトウキビ畑およびパインアップル畑で大きく,牧草地,水田,そして森林域で小さい傾向にあった。これらより,土壌の炭素貯留機能は土地利用や農地の管理方法によって顕著に異なることが分かった。 沖縄県石垣島轟川流域において現地観測を継続実施した。水位計,電磁流速計,濁度計を河川内に設置し,流量およびSS輸送量を連続的に捉えた。また,河川水を自動採水器によって採取し,SSおよびTOC濃度を測定した。その結果,16ヵ月の観測期間でSS輸送量は2621t(2.55t/ha/494days),TOC輸送量は274tC(0.27tC/ha/494days)であった。 沖縄県石垣島轟川流域を対象にWEPPモデルを用い,現況および流域内におけるサトウキビ夏植え栽培を株出し栽培に,パインアップル栽培を減耕起かつマルチングを実施する営農方法に変更した場合を想定し,SS,POC流出量を算出した。その結果,SS流出量,POC流出量は現況よりそれぞれ62%,63%減少することが予想された。
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