研究課題/領域番号 |
23780247
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤澤 和謙 岡山大学, 環境学研究科, 講師 (30510218)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 浸透破壊 / 土粒子輸送 |
研究概要 |
これまで浸透による土粒子移動の研究はパイピングに関連するもの多く,その中では,土粒子の移動が始まる動水勾配や浸透流速を決定/予測することに焦点が当てられてきた.しかし,土粒子の移動開始のみを把握するだけでは,粒子の移動開始後にどのように土粒子が流出してパイピングや空洞化に発展してくかを予測することは不可能であるため,本研究では限界動水勾配以上の動水勾配が作用した時に,どれくらいの速度で土粒子が移動し,土が輸送されるのかについて実験的かつ理論的に調査を行った. 実験では,U字型浸透破壊試験機を開発し,U字型のアクリル円筒内に均一粒径の硅砂を充填し,ボイリング(噴砂)を発生させた.ボイリングによってU字型円筒から溢れ出す土粒子の質量と水量を測定することで,土粒子の輸送速度(単位時間・単位断面積当たりから流出する土粒子の質量)を計測した.計測された土粒子の移動速度と,浸透流速や導水勾配の関係を整理し,力学理論に基づいて浸透流に運ばれる土粒子の移動速度についてモデル化を行った. 実験及び理論的考察から得られた結果は以下のようである.(1) 浸透破壊を生じ砂粒子が上向きに移動する箇所では,砂粒子の移動速度の増加に伴って動水勾配が減少する.これは,砂粒子が浸透水と同じ方向に運動することで,抵抗が減少するためと考えられる.(2) 測定された砂粒子速度の範囲では,その速度は,砂の移動を考慮した力のつり合い式から導かれる理論式とよく符合した.また,同式は粒径の異なる砂においても適用が可能であったが,その理由は,粒径変化の影響を,透水係数の値によって反映するためであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,鉛直上向きの浸透による浸透破壊の際に,浸透流によって運ばれる砂の挙動を実験的に調査した.実験においては,浸透破壊時の浸透水と砂粒子の流出量を分離して測定し,動水勾配と共に浸透流速と砂粒子の移動速度を計測した.その結果からは,透水係数を用いた砂と浸透水との相互作用モデルを用いれば,材料の違いによらず,鉛直方向の力のつり合いによって良好に砂の移動速度を推定できることが明らかとなった.これは,浸透流に運ばれる土粒子の移動速度について理論的考察と実験値の一致が良好であったことを示している.したがって,本年度に予定していた実験は最大限の成果が得られ,計画以上に進展してはいないものの,順調に研究は進展している.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果を受けて,次年度は以下の研究に取り組む。(1)土の間隙を移動する土粒子の輸送速度の把握とそのモデル化(2)水平方向に移動する土粒子移動速度の推定(土粒子間摩擦の評価)(3)土粒子の流亡~土塊の安定性の数値解析準備上記の(1)と(2)については,前年度の実験設備とノウハウから比較的簡単に実験を行うことが可能である.今後は(3)に示した土粒子の流亡~土塊の安定性の数値解析に向けて実験結果を整理する必要がある.特に,土の流亡(流動化)過程における構成則の変化について慎重に議論し,実験および数値解析の準備を進めることとする.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は実験消耗品(次年度の実験に必要な計測機器とアクリル管等の実験器具)と計算機(並列計算のためのコンピュータ)の費用とともに,成果発表のための会議参加費と旅費を計上している。
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