研究課題
本研究では,有機汚濁が進行し,貧酸素・無酸素化などの水環境劣化を抱える閉鎖性水域の環境修復に直接貢献することを目的とし,LED光照射による藻類の光合成の活性化を利用した水環境改善技術の開発を目指す.本年度では,現地適用を念頭に置いた室内実験の実施として,円筒水槽内での水中LED灯を用いた照射実験を行った.本年度のLED照射実験の主な目的は,光合成における藻類の波長選択性を考慮に入れて,青色波長と赤色波長の混合波長光に対する藻類の光合成活性化特性を把握することであり,これは光合成の効率を上げてより短期間でのDO環境の改善効果の期待と,増殖する藻類の選択・制御の可能性を検討することを目指すものである.実験では,直径30cm,高さ1mの円筒水槽内に,実水域で採取した貯留水と底質を充填し,暗所・高温条件下で無酸素状態を作り出したあと,点灯・消灯を各12時間とする明暗周期のもと1カ月間の照射実験を行った.本年度では,R/B比(赤色:青色)が1/4と2の二ケースのLED光について,水環境改善効果について検討した.R/B比が1/4の場合,照射開始3日後に無酸素化が解消されDOは飽和度で120%程度にまで上昇した.また,藻類の取り込み効果による窒素・リンの減少や,嫌気的状態の解消による硫化物の減少が確認された.ただし,緑藻類を主とした藻類が増加し,クロロフィルa濃度は富栄養化レベルにまで達したことが懸念するべき結果であった.R/B比が2の場合では,無酸素化は解消されるものの,植物プランクトンの増加が僅かであったため,DOは3mg/L程度の上昇であった.以上から,短期的なDO環境の改善効果を発揮させるためにはR/B比が1/4程度の条件で照射し,その後,R/B比を2程度にすることで,植物プランクトンの増殖を抑え,LED照射による富栄養化を回避することができる.
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