H.25年度は,土壌水分・EC計測技術としての時間領域透過法(TDT)の実証を目標として,以下の3項目について検討を行った。 ①SDI-12型TDT計測システムの構築:SDI-12プロトコルを利用して,高性能マイクロチップを搭載したTDTセンサーと通信できるインターフェイスおよびTDT波形解析プログラムを開発し,同システムによる土壌水分およびバルク電気伝導度(EC)の同時計測の可否と,その測定限界・精度について実験的に明らかにした。 ②TDT計測システムの適用限界の改善:構築したTDT計測システムは,極端に高いECを示す土壌においては機能せず,また低EC条件においては精度よくバルクECを決定することができなかった。そこで,特殊コーティングをセンサー感知部表面に施した特殊TDTセンサーを開発するとともに,信号解析アルゴリズムの改良を図り,測定限界の拡大とバルクEC計測の高精度化の両者を実現した。 ③TDT観測システムのフィールド観測への応用:当初の計画よりも早くTDT計測システムを構築することができたため,同システムを重粘土水田土壌のモニタリングに適用し,その有効性を検討した。特殊な誘電特性を示す粘土-水混合系には,TDRを含めたあらゆる技術が通用しないことが知られているが,本システムを適用することにより,重粘土のような特殊土壌においても,水稲生育初期段階における不可逆的な土壌の乾燥・収縮現象の効果的に捉えられることが判明した。
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