研究課題/領域番号 |
23780253
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
仲村渠 将 琉球大学, 農学部, 准教授 (70537555)
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キーワード | 沈砂池 |
研究概要 |
沈砂池の流れ場における浮遊土の輸送現象を把握するため,実験用開水路を加工して製作した沈砂池の実験装置を連続流式装置として操作し,インパルス応答法によるトレーサー実験を行った. 100L/minの定常流を流して連続流式装置として操作した.トレーサーは75マイクロメートルふるいを通過させたカオリナイト粒子である.トレーサーと水を混合した懸濁原水を1分間かけて導入部から注入した.排出部では任意の時間間隔で処理水を採水した.トレーサーが全て流れ去るのを目視で確認した後,ポンプ給水を停止し,トレーサーの沈殿物を回収してその絶乾質量を測定した.採水した処理水試料をろ過して,その浮遊物濃度を求めた. 以下の結果を得た.(1)トレーサーの導入形態を一様流れにした場合,排出部の浮遊土濃度の範囲は0.1~24.3mg/Lであった.トレーサーの注入質量は91.076g,沈殿質量は69.4710g,排出質量は21.605g,除去率は76.278%となった.無次元化したインパルス応答から計算した除去率は82%であった.完全混合槽列モデルの槽数パラメータはn=7であった.トレーサーは明瞭な密度流を形成し,その密度流が底面付近を流れる様子が観察された.(2)トレーサーの導入形態を落下流れにした場合,排出部の浮遊土濃度の範囲は0.2~ 71.1mg/Lであった.トレーサーの注入質量は99.815g,沈殿質量は69.5689g,排出質量は30.246g,除去率は69.698%となった.無次元化したインパルス応答から計算した除去率は70%であった.完全混合槽列モデルの槽数パラメータはn=24であった. 沈砂池の流れ場における浮遊土の輸送が,懸濁原水の流れ場への導入形態に依存することが明らかとなった.実沈砂池の導入部でよく使われる落下流れは,浮遊土の除去効果を低下させている. 前年度の成果を学会発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
窒素成分に関する計画を実施することができなかった.その理由は以下のふたつである.ひとつめの理由は,流れ場の数値モデルの作成に時間と労力を費やし過ぎたことである.ふたつめの理由は,年度途中にて,人材を失ったことである.達成度が60%であることから,自己点検評価を「やや遅れている」とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後,本研究では水理実験,数値実験,現地調査およびカラム実験を実施する.加えて,これらの実験・調査で得られたデータを解析し,その成果を学会発表する. 水理実験はほとんど完了しているため,必要に応じた追加実験を実施する.水理実験で得られた結果に基づき数値実験を本格実施し,沈砂池の流れ場を詳細に把握する.現地調査では,実沈砂池から貯留土をサンプリングする.研究を計画していた時点で使う予定をしていた沈砂池の状態が現在でも良くないため,調査する沈砂池を選定する作業から始める.カラム実験では,現地調査でサンプリングした貯留土を供試した実験を実施して,各態窒素成分の動態を把握する. 今年度の反省点を踏まえ,次年度においては,研究計画を効率的に進めるため,水質分析とガス分析を外注するなどの対応策を計画している.学会発表を国内にとどめ,国外での学会発表を行わないこと,及び人件費を削減することによって,その外注費を確保する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の所要見込額は1,403千円である.内訳は,水理実験,現地調査およびカラム実験に使われる消耗品費に703千円,水質・ガス分析の外注費に500千円,学会発表旅費に100千円,実験補助員への謝金に100千円である.数値実験には経費が掛からない.
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