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2011 年度 実施状況報告書

植物を利用した短期間・大量インフルエンザワクチン生産における環境調節に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23780255
研究機関東京大学

研究代表者

松田 怜  東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20547228)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードインフルエンザワクチン / ウイルスベクター / 一過的遺伝子発現 / 物理環境調節 / 植物利用型医薬用物質生産
研究概要

本研究は,植物を利用した迅速かつ安価なワクチン生産法として早期の実用化が期待できる一過的遺伝子発現法において,「植物の生理状態をワクチン生産にとって好適にする」というコンセプトのもと,これまでまったく試みられることのなかった栽培環境調節を行うことで,ワクチン生産性の向上を図ろうとするものである。ここで,一過的遺伝子発現法とは,植物ウイルス (あるいはその遺伝子) の機能を利用することで,植物に一過的に外来遺伝子を発現させる方法である。今年度は,植物に遺伝子を導入してから収穫するまでの約1週間を対象として,その間の気温と光合成有効光量子束密度 (PPFD) に着目し,研究を行った。ベンサミアナタバコにH1N1インフルエンザのワクチンタンパク質であるヘマグルチニン (HA) の遺伝子をmagnifection法により導入し,気温20または25℃,PPFD 100または300 μmol m-2 s-1を組み合わせた計4試験区を設け,収穫までの6日間栽培した。気温20℃で栽培した株の葉乾物重あたりのHA含量は,25℃で栽培したそれより有意に多く,3~5倍であった。PPFDによる有意な差は認められなかった。他方,株あたりの葉乾物重には試験区間に有意な差は認められなかった。これらのことから,遺伝子導入後の気温が株あたりのHA生産量に顕著な影響を及ぼすことが明らかとなった。一過的遺伝子発現法において,ワクチン生産量を最大化するためには,遺伝子導入後の気温調節が重要であることを示す結果である。また,気温20℃ではHAを含む可溶性タンパク質全体の量が多いことも明らかとなった。このことは,葉の可溶性タンパク質全体の量を増加させるような環境調節が,ワクチン生産量を増加させる上で有効である可能性を示唆する興味深い結果である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験系の構築は,海外共同研究者である米国ルイビル大学医学部の的場伸行助教授のラボと連携することにより,スムーズに行うことができた。当初は今年度に遺伝子導入前の栽培環境の検討を行う予定であったが,予定を変更し,遺伝子導入後の栽培環境について検討した。その結果,当初の予想通り,栽培環境のうち気温がワクチン生産量に影響を及ぼすことを実証することができた。以上のことから,研究はおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

次年度は,遺伝子導入後の気温の影響について,より幅広い気温の範囲を対象として調べるとともに,気温がHA含量に及ぼす影響のメカニズムについても検討したい。また,遺伝子導入前の栽培環境の影響について,今年度の成果である「葉の可溶性タンパク質全体の量を増加させるような環境調節がワクチン生産量を増加させる上で有効である可能性」に基づき,窒素施用量の影響について調べる予定である。さらに,今年度の研究の遂行過程で,減圧浸透による遺伝子導入時に,ウイルスの遺伝子を導入したバクテリアの培養液が植物体地上部に均一に浸潤せず,結果としてHAを発現する部位とそうでない部位が同一葉上に存在することが明らかとなった。そこで,培養液を植物体地上部に均一に導入するための減圧浸透条件についても検討を行いたいと考えている。

次年度の研究費の使用計画

当初の予定を若干変更し,「遺伝子導入後の栽培環境調節」について先に研究を行ったことから,消耗品費等について若干の繰越しが発生した。また今年度は研究補助者の協力を要しなかったため,計上していた謝金の支出がなかった。次年度は,上記の今後の研究の推進方策に基づき,主に消耗品費として研究費を使用する予定である。また,研究成果発表,情報収集,および海外共同研究者との情報交換のための旅費および論文投稿費としての支出も予定している。

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公開日: 2013-07-10  

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