近年の温暖化傾向により、特に暑熱ストレスを受けやすい乳牛では、暑熱対策が一層の課題である。一方、家畜の消化管内発酵由来のメタンは全球排出量の約25%を占め、農業分野では水田と並ぶ重要排出源である。そこで、夏季に暑熱の影響を受ける乳牛を対象に、畜舎全体を長期モニタリング可能な温室効果ガス排出量計測技術を用いて、環境インパクトに対する排出量変動評価の実証的研究を行った。周囲熱環境が牛体の生理状態に及ぼす影響とメタン・二酸化炭素排出量との関係を明らかにするため、二酸化炭素分析計を用いた排出量モニタリングシステムの構築を行い、ダイナミックチャンバー法によるガスフラックス評価手法の課題を整理した。畜舎内の風速が一定の条件下では、流入出ガスの濃度が安定し、フラックスを評価する手段としての可能性が示された。しかし、夜間では濃度差発現が小さく、精度よく測定するためには、施設内の流体解析等に基づく補完が必要であることがわかった。
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