研究課題/領域番号 |
23780263
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牧 雅康 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50375391)
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キーワード | リモートセンシング / 作物成長モデル / タイ |
研究概要 |
平成24年度は、前年度に開発した「光学センサデータを利用した植生指標」を研究対象地であるタイ国のスパンブリ県に適用可能か検討した。その結果、主に雲の影響のため、衛星搭載の光学センサデータの利用は極めて困難であることが分かった。そこで、雲量の多い地域でも適用可能な合成開口レーダーの利用について、現地の研究協力機関であるタイ国地理情報・宇宙技術開発機構(GISTDA)、さらには日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共に検討した。具体的にはGISTDAが受信しているRADARSAT-2の観測日に現地調査を行い、そこで得られた水稲の葉面積などをRADARSAT-2データから推定可能か検討した。その結果、この衛星センサを用いることにより、天候に左右されずに水稲の葉面積を推定することが可能であることを確認した。このことから、当初予定していた光学センサー衛星画像の利用は困難であったが、合成開口レーダー衛星画像(特にCバンドによる計測が可能な衛星)を利用することで、今年度の研究目的であった「農事暦の推定」が可能となった。 また、これにより、圃場レベルで検証済みであるリモートセンシングデータと作物成長モデルの同化による生育・収量の高精度推定手法の適用が、雲量の多い対象地域においても可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、主に衛星データと作物成長モデルの同化、衛星データを利用した農事暦の推定についての検討であった。 これに対して、計画段階で予定していた衛星(光学センサ搭載)の利用は困難であったが、その代替案として、合成開口レーダー搭載衛星の利用可能性について現地調査結果と比較検討した結果、農事暦の推定や葉面積の推定が可能であった。これにより、結果として本年度の主な目標を達成することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成24年度に得られた成果を広域での利用可能性を検討するため、衛星データ(合成開口レーダーデータ)と作物成長モデルを用いて対象地域で水稲の生育・収量予測を行う。この結果を検証するためには、収量データのみならず農事暦の情報も必要不可欠である。現時点で入手可能な(公式の)農業統計情報は、2010年頃までのため、時系列で合成開口レーダーデータが揃っている2011年や2012年については、現地で農家へのアンケート調査を行い、必要な統計情報を収集する必要がある。よって、今後は衛星データ解析結果の検証用の現地情報収集(現地農家へのアンケート調査、地方行政機関への聞き取り調査等)を、重点的に行うことを予定している。また、本年度も実施した無人空撮機器による撮影についても、今後も継続して行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、これまでに得られた成果を活用し、対象地域内の水稲の生育・収量推定を試みる。その精度検証のためには、統計情報が必要であるが、利用可能な衛星データの制約から、統計情報が整備されていない2011年や2012年を対象とする必要がある。よって、この年の収量や農事暦情報を収集するための現地農家へのアンケート調査を集中的に行う。そのためには、現地での通訳や効率的な移動を行うためのレンタカーが必要となる。 これらのことから、平成25年度の研究費は、主に現地アンケート調査に関わる旅費や人件費に用いる。さらに、合成開口レーダーデータの更なる利用の可能性を検討するため、合成開口レーダーおよび光学センサの比較に用いる同時期の撮影されたそれぞれの衛星画像の購入も予定している。
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