本申請研究は、我が国の在来牛である口之島野生化牛(以下、野生化牛)を遺伝資源として利用することで、放牧主体で生産された牛肉の高品質化が可能との仮説を検証する第一段階として、野生化牛と黒毛和種の交雑種(以下、KJB)の慣行肥育における発育および肉質特性を検討した。研究期間である3年間(H23~H25)において、まずKJBおよび対照となる黒毛和種の産仔を各3頭以上作出し、当牧場慣例の育成・肥育管理を行いながら(i)KJBの体重および体尺測定値の推移(ii)KJBの胸最長筋筋線維型および筋線維直径の推移(iii)KJBの胸最長筋における筋周膜ならびに筋内膜の厚さの推移(iv)屠殺後のKJB胸最長筋における筋線維型同定、筋線維直径計測および筋内コラーゲン構築の4点に関して検討する予定である。 平成23年度にKJBの流産が発生したものの、平成24年度はじめにKJBおよびJB各3頭の確保は達成された。これらの供試牛は平成23年8月までに出生した先行牛群(各区2頭)と平成24年はじめに出生した後行牛群(各区1頭)で同様の飼養管理を行いながら並行して試験を行っている。平成25年度も体重および体尺測定は予定通り全供試牛で毎月行っている。また、生研針による胸最長筋サンプル採取も全供試牛で予定月齢時(6、12、18ヵ月齢)で完了し、得られたデータから、KJBの体成長および骨格筋特性を日本畜産学会(平成25年9月)および日本暖地畜産学会(平成25年10月)において公表した。 平成25年度は、9月にKJB2頭、11月にJB2頭が出荷月齢27ヵ月齢に達し、予定通り県内食肉企業の協力を受け、KJB、JB各2頭の右半丸枝肉を回収し、解体試験を実施した。平成25年度終了時点で、後行牛群が24ヵ月齢を迎えており、現在後行牛群の体重、体尺測定を継続するとともに、先行牛群の解体試験から得られたサンプルを解析中である。
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