研究課題/領域番号 |
23780268
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
石川 伸一 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (00327462)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 畜産食品 / 卵 / プロテオミクス / プロテオーム解析 |
研究概要 |
鶏卵の加工特性として凝固性、気泡性および乳化性があげられる。このような特性により、スポンジケーキやマヨネーズなど多種多様な卵製品を作ることができる。しかし、鶏卵の品種や貯蔵期間、加熱殺菌条件が気泡性や乳化性に影響し、最終製品の品質にばらつきが生じることが明らかとなっている。卵製品の品質の安定化、さらに品質や機能向上のためには、 原材料のばらつき、貯蔵による成分の変化、加工による成分の変化を網羅的に把握し、食品としての基礎的な知見を集積しておくことが大切である。そのため本研究では、医学・薬学分野で疾病診断や創薬に利用され、ある時点での細胞、組織などの中に発現している全タンパク質を網羅的に解析する「プロテオーム解析」を用いて分析を行った。今回は特に、鶏卵卵白を研究対象とし、タンパク質のi)品種間の違い、ii)貯蔵による変化、およびiii)加工による変化を質的・量的な観点で網羅的に解析する。最終的には集積したデータを比較解析し、顕著に変化する「マーカー」タンパク質を探索することを目標とすした。 方法は主に蛍光二次元電気泳動法(2D-DIGE)を用いてマーカーの探索を行った。 結果として、i)白色ジュリア種とアローカナ種および名古屋コーチン種間の2D-DIGEの電気泳動図に明確なスポットの違いは確認されなかった。ii)産卵後0日目と産卵後7日目間では、タンパク質のメジャースポットに大きな違いは見られなかったが、貯蔵によって等電点6.0-6.5、分子量約35-40kDa付近で新しいスポットが出現した。iii)生卵白と54℃および68℃間の電気泳動図に明確なスポットの変動は確認されなかった。生卵白と85℃の2D-DIGEの結果、オボムコイドおよびオボトランスフェリンのスポットの等電点が低くなる傾向が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に鶏卵卵白を研究対象とし、タンパク質のi)品種間の違い、ii)貯蔵による変化、およびiii)加工による変化を質的・量的な観点で網羅的に解析を行い、それぞれの検討項目に関して新しい知見を得ることができたため。 具体的には、i)鶏卵の品種間ではメジャータンパク質の大きな違いはないことが示唆された。ii)貯蔵によって生じたスポットの等電点がオボトランスフェリンと同じであることから、オボトランスフェリンの部分分解物である可能性が示された。iii)オボムコイドおよびオボトランスフェリンの等電点が低くなる要因として、タンパク質の翻訳後修飾の変化が考えられ、高温での加熱処理によりアミノ酸残基の側鎖の構造が変化したと推測された。
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今後の研究の推進方策 |
今回は主にメジャースポットのタンパク質に着目し、鶏卵卵白のi)品種、ii)加工、およびiii)貯蔵によるタンパク質変動のプロテオーム解析を行った。 今後は、メジャースポットだけではなく、微量タンパク質のスポットがより明確になれば、サンプル間の違いを発見できる可能性があるため、より分析感度の高い手法でプロテオーム解析を行いたい。今後実験を行う際に卵白中に含まれる微量タンパク質を分離するためにも、試料調製のタンパク質抽出段階で、卵白中のタンパク質を完全に溶解し、凝集をさせないことが必要になる。また、発現量の多いタンパク質であるオボアルブミンの影響により、他の量的に少ないタンパク質がマスキングされ、結果的にゲル上で分離・検出できるスポット数が制限されていると考えられる。試料調製の時点でアルブミンを除去することで、発現量の低い微量タンパク質を検出することができると考えられる。 泳動図のスポットの分離能を高め、微量タンパク質にも着目した新たなマーカーの探索を行うことが今後の研究課題である。将来の展望として、発見したマーカーを品質評価方法の開発や品質の安定した卵食品の提供、さらには新しい機能性食品の開発に役立てることである。
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次年度の研究費の使用計画 |
電気泳動ならびに質量分析解析に必要な物品費などが研究費のメインの使用予定である。さらに、得られた研究成果に関しては積極的に学会発表および論文の投稿を予定しているため、そららに掛かる費用も研究費として使用していきたいと考えている。
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