研究課題/領域番号 |
23780270
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
松浦 晶央 北里大学, 獣医学部, 講師 (50406899)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アニマルウェルフェア / 馬 / 北海道和種馬 / 対州馬 / 振動解析 / 最大許容負荷重量 / コルチゾール |
研究概要 |
日本在来馬は動物介在活動・療法に適しているとされるが、体格が小型であるが故、最大許容負荷重量を客観的に把握することはアニマルウェルフェア向上にとって極めて重要である。課題1)として、馬が正常な歩法を維持できる騎乗者の適正体重を把握するため、まず、モーションキャプチャ(三次元画像解析)システムを用いて北海道和種馬で測定手法を確立した。本試験として、速歩する対州馬で測定を行った結果、馬歩法の左右対称性は70 kgよりも110 kgで低下する傾向を示し、120 kgで有意に低下した。また、馬歩法の安定性は70 kgよりも100 kgおよび120 kgで有意に低下した。さらに、馬の振動と騎乗者の振動のずれ時間(ラグタイム)は、70 kgよりも120 kgで有意に長くなった。これらの結果から、対州馬で速歩をする場合、最大許容負荷重量は100 kgであることがあきらかとなった。 課題2)として、乗用馬としての操作性を把握するため、対州馬において騎乗者の合図に対する馬の応答性を測定した。動物介在教育に活用する馬には、小学生児童のように脚力が弱い騎乗者に対しても安全かつ容易に運動する能力が必要とされるため、操作性を把握には大きな意義がある。 課題3)として、ホーストレッキング時の種々のストレッサーに対するストレス応答を把握するため、和種馬を用いて血漿中コルチゾール濃度を指標として測定を行った。草原コースと森林コースで比較したところ、森林コースでコルチゾール濃度が高い傾向があった。また両コースにおいて、トレッキング前よりも2時間後にコルチゾール濃度が有意に低下したことから、トレッキングにより馬のストレスが低下する可能性が見いだされた。これはアニマルウェルフェアに関する新しい知見になると考えれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1)については手法が確立でき、対州馬においては解析まで完了できた。得られた研究成果はまもなく国際誌に投稿することとしている。今後、北海道和種馬、木曽馬および与那国馬で測定を行えば解析可能である。 課題2)については現在解析中であるが、対州馬では測定が完了している。他品種の測定にもそれほど困難は伴わないと考えている。 課題3)については当初たてていた仮説と異なる結果が得られたが、むしろ新しい知見となる可能性が大きく、興味深く感じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、課題1)および2)については、北海道和種馬、木曽馬および与那国馬で測定する予定である。当初は平成23年度に北海道和種馬と木曽馬の調査を行う予定であったが、地震の影響により開始が遅れたため、対州馬のみの測定・解析を行うこととした。そのため、次年度使用額として約10万円が生じた。平成24年度以降に請求する研究費と合わせて、今後、他の3品種の測定も行う。 興味深いことに、課題3)においてトレッキングにより馬のストレスが低下する可能性が見いだされたが、今後、トレッキングを行わない安静時(対照)と比較する実験を追加することにより、サーカディアンリズムとの関連も明確になると考えられる。24年度にはさらに供試動物数を増やして測定を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、北海道和種馬、木曽馬および与那国馬の3品種の測定を行うため、主に旅費および借馬料として研究費の使用を計画している。また、行動解析関連、心電図解析関連、およびコルチゾールなど生化学測定用の消耗品として、研究費を使用する。
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