研究課題/領域番号 |
23780272
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
山下 恭広 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産環境研究領域, 研究員 (60547719)
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キーワード | フミン酸 / 酸化金属 / 燃料電池 / 電気産生菌 / エネルギー |
研究概要 |
本年度は、前年度に試作した複合系微生物燃料電池の発電性能について検討を行うとともに、電気産生菌の活性を高めることが期待できる電極触媒としてフミン酸と酸化金属を塗布した電極触媒の開発を試みた。複合系微生物燃料電池の発電性能試験では、2槽式微生物燃料電池のアノード側(500mL)に10mM酢酸含有培地を添加し、カソード側(500mL)に50mM K3Fe(CN)6含有培地を添加し試験を行った。また、電極触媒は各槽ともにプラチナを塗布していない10×10cmのカーボンクロスを用いた。プロトン交換膜にはナフィオンを用い、植種菌として活性汚泥をアノード側に10%添加した。その結果、活性汚泥添加により3日目以降電圧の上昇が認められた。これに対し、活性汚泥無添加では試験期間中、電圧の上昇は認められなかった。このことから、培地由来の発電ではなく、微生物による発電が起こっていることが確認された。酢酸の有無による発電の違いでは、酢酸添加時には、電圧0.35V付近を維持していたのに対し、酢酸無添加では、試験開始直後から電圧の減少が進み、3日目にはほぼゼロとなった。酢酸の添加により顕著な電圧の差が認められたことから、電気産生微生物に酢酸が関与していることが示唆された。一方、フミン酸と酸化金属を含有した電極触媒の作製では、導電性のポリマー等を混合することにより、上記物質を保持させた電極触媒を開発した。発電性能については、現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フミン質の存在が微生物燃料電池の電子伝達に有利に働くか検証するために、本年度は、前年度に試作した複合系微生物燃料電池の発電性能について検討を行った。電極に微生物を高密度に集積可能な炭素繊維を布状に成形したカーボンクロスを用いて性能試験を行った結果、酢酸の添加により顕著な電圧の差が認められたことから、電気産生微生物に酢酸が関与していることが示唆された。さらに、電気産生菌の活性を高めることが期待できる電極触媒としてフミン酸と酸化金属を塗布した電極触媒の開発を試み、導電性のポリマー等を混合することにより、フミン酸や酸化金属を保持させた電極触媒を開発することに成功した。このことから、研究はおおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
フミン酸と酸化金属を電極触媒に保持させることにより電気産生菌の活性を高めることが期待できることから、次年度以降も微生物燃料電池の発電量の向上を目指し、電極触媒の改良及び性能評価を進めていく。また、試作した微生物燃料電池を用いて電気産生菌の集積を目指すとともに、より実用化に近い装置として1槽型微生物燃料電池の試作を行い、性能評価を行う予定である。測定方法としては、電圧を連続的に測定するとともに、電圧をある値の間で往復させるサイクリックボルタンメトリー(電流-電位曲線の測定)によって、電子移動速度を予測し、本実験装置の反応機構の推定を行う。また、発電量の明らかな差が認められれば、電極に増殖した微生物の群集解析を行うことで、電気産生菌の推定を行う。顕著な成果が得られれば、学会発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費、人件費・謝金に使用する。なお、繰越金額577,398円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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