研究課題
筋肉部位間で異なる香気成分の生成機構の解明のため、加熱前の食肉中の低分子化合物についてメタボローム解析を行った。生体重約90 kg のLWDの雌豚3頭を供試した。と畜後、枝肉を2℃で168時間貯蔵した。168時間の貯蔵を行った枝肉より、速筋型筋肉である腰最長筋(longissimus lumborum: LL)および遅筋型筋肉である中間広筋(vastus intermedius: VI)を採取し、液体窒素で凍結した後-80℃で保存した。採取した骨格筋組織よりメタノールおよびクロロフォルムを用いて代謝物質の抽出を行い、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計により測定を行った。測定は陽イオン性代謝物質および陰イオン性代謝物質について行った。検出されたピークは、自動積分ソフトウエアを用いて自動抽出し、ピーク情報として質量電荷比、泳動時間、ピーク面積を得た。検出されたピークの質量電荷比および泳動時間の値を基に候補化合物のデータベース検索を行い、188化合物を検出した。188化合物の内、解糖系・糖新生、ペントースリン酸経路、クエン酸回路に関係する代謝物質が27種、尿素回路とアミノ酸代謝(Glu,Gln,His,Pro)に関係する代謝物質が25種、アミノ酸代謝(Gly,Ser,Cys)に関係する代謝物質が17種、アミノ酸代謝(Asp, Ala,Lys)に関係する代謝物質が13種、分枝鎖アミノ酸代謝に関係する代謝物質が4種、芳香族アミノ酸代謝に関係する代謝物質が4種、プリン代謝、ピリミジン代謝に関係する物質が22種、ニコチン酸およびニコチンアミド代謝に関係する代謝物質が3種検出された。また、と畜168時間後において、VIでのみ検出された物質は14物質であり、LLでのみ検出された物質は13物質であった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、食肉の各部位に特徴的な香気成分を特定すること、およびその香気成分の生成機構を解明することを目的として、異なる筋肉部位における加熱前の代謝関連物質のメタボローム解析と加熱後の揮発性物質の測定を行うこととしている。本年度は加熱前の代謝関連物質のメタボローム解析を行い、異なる筋肉部位における代謝化合物の差異について明らかにしていることから、研究の目的に対しておおむね順調に進展していると評価できる。
次年度において、加熱後の食肉からの揮発性物質測定のための条件決定を行い、異なる筋肉部位間での揮発性物質の差異を明らかにする。これらの揮発性物質の測定結果を基に、食肉の各部位に特徴的な香気成分を特定する。本年度で得た加熱前における代謝関連物質のメタボローム解析結果、および、次年度で得る予定である加熱後の揮発性物質の測定結果を基に、香気成分の前駆物質候補の探索を行い、筋肉部位に特徴的な香気成分の生成機構を解明する。
本研究の推進のため、次年度の研究費は交付申請時の計画どおり使用する。なお、次年度使用額223,261円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件)
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巻: - ページ: -
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