研究概要 |
筋肉部位間で異なる香気成分の生成機構の解明のため、加熱後の食肉からの揮発性物質の抽出条件の検討を行った。揮発性物質の抽出は、固相マイクロ抽出(Solid phase micro extraction:SPME)ファイバーを用いた動的サンプリングで行った。最初にSPME法で使用するSPMEファイバーの抽出相の検討を行った。4種類のSPMEファイバー(「75 μm Carboxen/PDMS」, 「50/30μm DVB/CAR/PDMS」, 「85μm polyacrylate」, 「65μm PDMS/DVB」)を用いて検討を行い、抽出された揮発性物質数が最も多かった「65μm PDMS/DVB」をその後の解析に用いた。供試豚肉は、2種類の筋肉部位(中間広筋(モモ)および胸最長筋(ロース))とし、と畜7日目に枝肉より採取し、分析まで-30℃で凍結保存した。前処理は、調理法として「煮る」を想定し、真空包装下で90℃・30分の加熱を行った。抽出した揮発性物質に対し、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC/MS)を実施した。GC/MS分析の結果、約100ピークを検出し、標準物質の保持時間およびマススペクトルパターンとの比較により十数種の物質を同定した。同定した物質は両筋肉に存在し、1-pentanal, 1-hexanal, 1-heptanal, 1-octanal, 1-nonanalおよび 1-octen-3-olの合計量が、検出された揮発性物質の総量の50 %以上を占めていた。また、未同定物質の大部分についても、保持時間およびマススペクトルパターンから両筋肉に存在することを確認した。 これらより、揮発性物質の種類については筋肉間で大きな違いがないと考えられた。揮発性物質総量の80 %以上を占める47物質の量比を用いて主成分分析を行ったところ、筋肉で異なる傾向がみられた。
|