研究課題/領域番号 |
23780286
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山盛 徹 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (00512675)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / DNA修復 / APエンドヌクレアーゼ / がん |
研究概要 |
近年、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の損傷と修復が、がん病態に影響を与える可能性が示唆されているものの、その関連は明らかではない。mtDNA修復に不可欠な酵素であるミトコンドリア型のAPエンドヌクレアーゼ(mtAPE)は現時点で同定されておらず、本分野の研究を妨げる一因となっていることから、mtAPEの実体と機能を明らかにすることを目的に研究を行った。本研究においては、他の細胞内分画からのタンパク質の誤混入を防ぐため、高純度のミトコンドリア分画を得る技術が必要である。そこで研究開始にあたり、ミトコンドリア単離のプロトコールについて検討を行い、純ミトコンドリア分画と小胞体に由来するミトコンドリア結合膜分画を分離することが可能となった。これまでの常法では、これらの混合物をミトコンドリア分画と称しており、本法によりこれまでよりも高純度のミトコンドリア分画を得ることが可能になった。核におけるAPエンドヌクレアーゼ活性は90%以上がAPE1タンパク質に由来するものであることから、mtAPEの第一の候補はミトコンドリアに移動したAPE1タンパク質であると考え、これについて検討した。ラット肝臓から純ミトコンドリア分画を含む各細胞分画を分取し、APE1の分布をウエスタンブロット法により検出した。その結果、肝ホモジネート、細胞質、粗ミトコンドリア分画にはAPE1の存在が確認されたものの、純ミトコンドリア分画では検出されなかった。しかしながら、粗ミトコンドリア分画と純ミトコンドリア分画のAPエンドヌクレアーゼ活性をin vitroで比較したところ、純ミトコンドリア分画においても粗ミトコンドリア分画の20から25%に相当するAPエンドヌクレアーゼ活性が検出された。このことは、ミトコンドリアにはAPE1とは異なるAPエンドヌクレアーゼが機能的に存在していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進展に当初計画よりも若干の遅れがみられるが、この最大の原因は上述した純度の高いミトコンドリアを単離する方法の確立に予想以上に時間がかかったことによるものであると思われる。しかし、ここで十分な時間をかけて方法を確立したことから、研究開始時には予想していなかった非常の新規性の高い知見が得られた。したがって、当初計画から多少の遅れはあるものの、研究としては意義深い方向に進んでおり、おおむね順調に推移しているものと考える。またその間、今後の研究に必要だと思われる実験の予備的検討も行っており、次年度における大きな進展が期待できるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究の結果、mtAPEはAPE1以外の酵素であることが明らかとなったことから、次年度はまずこの酵素の同定を行う。その後、当初計画に従い、細胞レベルでの機能解析、実験動物モデルを用いた解析と順次進める。また研究の進行状況に応じて、本研究から得られた結果を取りまとめ論文発表および学会発表の形で成果の報告を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究費のうち、経費の節減の結果生じた使用残については、次年度の物品費として使用する予定である。次年度の研究費は、研究用試薬ならびに実験動物等の研究の遂行に必要な物品費、論文作成・英文校正用の費用、国内外学会発表用の旅費、通信費およびデータ整理等の研究補助に対する謝金等として使用する予定である。その使用は妥当であり、有効に研究費を使用できると考える。
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