研究課題/領域番号 |
23780289
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
佐々木 淳 岩手大学, 農学部, 助教 (60389682)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ブロイラー / 第六胸椎 / 脊椎膿瘍 / 骨髄炎 / 関節炎 / 脚麻痺 |
研究概要 |
今年度は、ブロイラーにおける脊椎膿瘍の発生状況を把握することを目的として、岩手県内における一般のブロイラーインテグレーターに材料の提供を依頼し、本症の発生状況を病理学的・細菌学的に検索した。本症は主に第六胸椎に形成された膿瘍、つまり病理組織学的に壊死性化膿性肉芽腫性骨髄炎・関節炎によって胸髄が圧迫を受けることにより、脚弱や脚麻痺などの臨床症状が発現することがあらためて明らかとなった。さらに、これまでの検索では50日齢前後の出荷直前の症例のみを検索対象としていたが、今回の検索ではおよそ2週齢から検討しはじめ、その時点ですでに膿瘍の初期病変と考えられる病変を有する症例が見出された。いっぽう、多くの野外例では、脊椎膿瘍の有無にかかわらず第5、6、7胸椎の関節軟骨部位において、関節軟骨層の出血を伴う離断性病変が認められ、一部の症例では細菌塊を伴うものもみられた。以上の結果より、本症は2週齢前後から発生することが示され、病変の初発部位としては関節軟骨部における離断性病変の可能性が示唆された。 病変部の細菌検査により、従来も報告されている大腸菌群の他に、多くの症例からサルモネラ属菌が分離され、それらのいくつかは血清型別によりSalmonella Infantisと同定された。この結果は、本症の起因菌がヒトの食中毒起因菌と同一であることを示し、食の安全・安心を確保する観点から、本症の疾病コントロールが重要であることが示された。 本症の病原菌の感染経路として、血行性感染の他に鳥類特有の器官である気嚢を介した経気道感染の可能性も考えられているが、本症の主病変部である第六胸椎を中心とした部位におけるブロイラーの気嚢の解剖学的な知見は乏しく、あらためて正常構造を把握する必要がある。CTを用いた3D画像解析による気嚢検索は現在も継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では、野外のブロイラーインテグレーションで発生のみられたブロイラーの脊椎膿瘍の発生状況を把握することができ、その病理学的特徴とともに本症に関与する病原体を明らかにしてきた。本症の感染経路の検索として、CTを用いた3D画像解析による気嚢検索も行ってきたが、次年度も継続調査を行う。 したがって、本研究は初期の研究目的に対しておおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果より、ブロイラーの脊椎膿瘍の発生時期は早くて2週齢前後である可能性が示された。次年度では、協力関係にある一般のインテグレーターに材料の提供を依頼し、脚弱・脚麻痺を示す2週齢前後のブロイラーを主に継続調査し、本症の初発病変部を特定する。 本症の感染経路として、従来、血行性感染の他に鳥類特有の器官である気嚢を介した経気道感染の可能性も疑われているが、本症の主病変部である第六胸椎を中心とした部位におけるブロイラーの気嚢の解剖学的な知見は乏しく、あらためて正常構造を把握する必要がある。CTを用いた3D画像解析による気嚢検索は現在も継続中である。 野外例の継続調査とともに、野外例から分離した菌株を用いた再現実験も予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、野外例の継続調査とともに野外例から分離した菌株を用いた再現実験を予定しているため、実験鶏を自家繁殖させる目的として自動転卵装置付き小型孵卵器(昭和フランキ P-008A型)を2台購入予定である。また、細菌の感染経路として血行性感染の他に経気道感染も疑われているため、超音波式ネブライザ(オムロン NE-U17)を1台購入する。 実験に用いる一般的な試薬・薬品、ミクロトーム替え刃、包埋用パラフィンなどの消耗品については、前年度とほぼ同様に購入する。実験鶏の鶏飼料や市販鶏種卵については、適宜購入する。 研究成果の発表を行うため、国内旅費と論文の英文校閲費、論文別刷り費なども予定している。 なお、平成23年度に使用予定であった次年度使用額は、備品の納品日程の都合により次年度の研究費として使用予定である。
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