前年度の研究成果より、ブロイラーにおける脊椎膿瘍は2週齢前後より発生することが明らかとなったが、原因菌が第六胸椎に至る感染経路は特定できなかった。本症の感染経路としては血行性感染の他、鳥類特有の器官である気嚢を介した経気道感染の可能性も疑われている。しかし、現在の本邦で多く飼養されているブロイラー種における気嚢の解剖学的知見は乏しく、あらためて正常構造を把握する必要があることから、最終年度ではCTを用いた3D画像解析によるブロイラーの気嚢構造探索と病理学的検索を実施した。実験にはブロイラー農場で出荷直前に自主廃棄された44~52日齢のブロイラーと、初生で導入し74日齢まで飼育したブロイラーを用いた。今回検索したほとんどのブロイラーの頸椎椎体では空気とほぼ同様のCT値を示す領域が認められたことから含気骨であることが示されたが、10週より若齢のブロイラーでは第六胸椎における含気構造は確認されなかった。頸部、胸腔および腹腔では、空気とほぼ同様のCT値を示す領域がそれぞれ認められ、胸部領域について‐1000~‐100でリージョングローイングを行うと、肺と気嚢の一部が描出された。腹部の軸状断では、腹腔臓器間における気嚢の局在が見られた。さらに同領域内をCT値1000に、領域外を‐1000に変更してボリュームレンダリングを実施したところ、肺および鎖骨間気嚢、前または後胸気嚢、腹気嚢の一部がそれぞれ描出された。しかし、脊椎椎体の含気領域とそれら気嚢との連続性は確認できなかった。今回検索したブロイラーでは主に頸椎や上部胸椎までが含気骨であり、これらの領域は鎖骨間、胸、腹気嚢などと連続していることが推察された。一方、ブロイラーの第六胸椎椎体では空気と同程度のCT値を示す領域は認められなかったことから、ブロイラーでみられる脊椎膿瘍の感染経路として経気道感染の可能性は低いと考えられた。
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