研究課題/領域番号 |
23780291
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
椎名 貴彦 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (90362178)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 食道 / 新生子 / 腸神経系 / 筋細胞 / 食道疾患 |
研究概要 |
哺乳動物では、離乳期に誤嚥や胃食道逆流症といった食道に関連した疾患が多く発生する。離乳期の食道疾患には、食道機能の劇的な変化が関連していることは予想できるものの、その病態は不明である。研究代表者は、なぜ、離乳期に食道に関連した疾患が多く発生するのか、という問題を究明し、その予防や治療法の確立に貢献したいと考えている。特に、新生子期の食道筋に見られる筋細胞の形態変化に注目し、ここに離乳期の食道疾患の病態解明の鍵があると踏んでいる。この仮説を証明するためには、構造がダイナミックに変化する新生子期の食道が、機能的にどのような変化を起こしているのかを詳細に解明する必要がある。そこで本研究では、哺乳期から離乳期にかけて、食道運動を制御している神経回路の変化や、哺乳期および離乳期動物における食道平滑筋および横紋筋細胞の性質を解明することを目的とする。 平成23年度は、出生間もない動物の食道における横紋筋および平滑筋運動がどのような神経によって制御されているのかを明らかにした。出生直後から2週齢までの新生子ラットから食道を摘出してオルガンバスにセットし、in vitroで食道運動を記録した。神経支配について調べるために、外来神経(迷走神経)を電気刺激したところ、2相の収縮反応が生じた。薬理学的解析により、1相目の早い反応は横紋筋、2相目の遅い反応は平滑筋の反応であることが判明した。出生直後の食道では、明確な2相の反応が迷走神経刺激により誘導されたものの、日齢を追うごとに、2相目の平滑筋の反応が減弱していき、1週齢ではほとんど消失した。1相目の横紋筋の反応はより張力を増していった。以上の結果は、新生子期食道の横紋筋および平滑筋の運動はともに迷走神経によって支配されていることを示している。また、成長に伴って、食道平滑筋細胞の消失あるいは平滑筋に対する神経支配の変化が生じることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初、困難になることが予想された食道運動実験系の確立が早々に達成できた。そのため、本研究の主な目的のひとつである「食道運動を制御している神経回路の変化」について、おおむね解明することができた。研究成果を各種学会や英文誌上にて報告することができた。以上の点から、現在までの達成度として、「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。
|
今後の研究の推進方策 |
神経機能に引き続き、新生子の食道平滑筋および横紋筋細胞の性質の解明に取り組む予定である。筋収縮あるいは弛緩を引き起こす因子(神経伝達物質、ホルモン)や、受容体・イオンチャネルなどについて、詳細を解明できるように研究を進めていく方針である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験動物、各種作動薬や阻害薬といった消耗品類、学会参加のための旅費、研究成果を公表するための論文投稿費に使用する予定である。
|