研究課題/領域番号 |
23780291
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
椎名 貴彦 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (90362178)
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キーワード | 食道 / 新生子 / 腸神経系 / 筋細胞 / 食道疾患 |
研究概要 |
哺乳動物では、離乳期に誤嚥や胃食道逆流症といった食道に関連した疾患が多く発生する。離乳期の食道疾患には、食道機能の劇的な変化が関連していることは予想できるものの、その病態は不明である。研究代表者は、なぜ、離乳期に食道に関連した疾患が多く発生するのか、という問題を究明し、その予防や治療法の確立に貢献したいと考えている。特に、新生子期の食道筋に見られる筋細胞の形態変化に注目し、ここに離乳期の食道疾患の病態解明の鍵があると踏んでいる。この仮説を証明するためには、構造がダイナミックに変化する新生子期の食道が、機能的にどのような変化を起こしているのかを詳細に解明する必要がある。そこで本研究では、哺乳期から離乳期にかけて、食道運動を制御している神経回路の変化や、哺乳期および離乳期動物における食道平滑筋および横紋筋細胞の性質を解明することを目的とする。 平成24年度は、新生子の食道平滑筋および横紋筋細胞の性質を解明することに焦点を当てて、研究を行った。出生直後から2週齢までの新生子ラットから食道を摘出してオルガンバスにセットし、in vitroで食道運動を記録した。筋収縮あるいは弛緩を引き起こす因子を食道標本に適用して、実際に収縮あるいは弛緩反応を誘発するかどうかを確かめた。その結果、それらに対する反応性(感受性)が成長に伴って変化することを明らかにした。また、新生子期の食道に特有な機構があるかどうかを探索した。そのひとつとして、成体食道では平滑筋に見られる「ギャップ結合」に注目し、新生子食道横紋筋にそれが発現しているか調べた。新生子食道にはギャップ結合を形成するタンパク質をコードする遺伝子が発現していることを明らかにした。また、新生子食道の収縮運動がギャップ結合阻害薬により抑制されること見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度確立した「in vitro食道運動実験系」を年度当初から利用することができた。そのため、本研究の主な目的のひとつである「新生子食道を構成する筋細胞の性質の解明」について、おおむね達成することができた。研究成果は、各種学会や英文誌上にて報告することができた。以上の点から、現在までの達成度として、「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで明らかにした、発生に伴う食道筋層や神経系の変化が普遍的なものであるかどうかを明確にするため、げっ歯類以外の哺乳動物の食道を解析する予定である。 また、平成25年度は最終年度に当たるため、研究の総括と論文や学会での成果発表にも、力を入れたいと考えている。。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物、各種作動薬や阻害薬といった消耗品類、学会参加のための旅費、研究成果を公表するための論文投稿費に使用する予定である。
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