研究課題
哺乳動物では、離乳期に誤嚥や胃食道逆流症といった食道に関連した疾患が多く発生する。研究代表者は、新生子期の食道筋に見られる筋細胞の形態変化に注目し、ここに離乳期の食道疾患の病態解明の鍵があると踏んでいる。そこで本仮題では、哺乳期から離乳期にかけて、食道運動を制御している神経回路の変化や、哺乳期および離乳期動物における食道平滑筋および横紋筋細胞の性質を解明することを目的とした。平成23、24年度は、出生間もない動物の食道に対する神経支配および筋細胞の性質に焦点を当てて研究を行った。その結果、(1)新生子期食道の横紋筋および平滑筋の運動はともに迷走神経によって支配されていること、(2)食道平滑筋細胞が消失あるいは平滑筋に対する神経支配が成長に伴って変化すること、(3)アセチルコリンに対する反応性(感受性)が成長に伴って変化すること、(4)新生子食道にはギャップ結合を形成するタンパク質をコードする遺伝子が発現していることを明らかにした。平成25年度(最終年度)は、新生子食道における受容体やイオンチャネルの発現動態が、日齢を追うごとに変化するかどうかを調べた。ニコチン性アセチルコリン受容体mRNAの発現をRT-PCRにより検出したところ、出生直後のラットの食道には、成熟ラットの食道とは異なるサブユニットのmRNAが発現していること、その発現動態は成長に伴って変化することが明らかとなった。この特性により、食道筋のアセチルコリンに対する反応性(感受性)は変化し、新生子期の食道運動は適切に調節されていると考えられる。
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