研究課題/領域番号 |
23780294
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
下島 昌幸 山口大学, 農学部, 准教授 (10422411)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 日本脳炎ウイルス / 感染メカニズム / ウイルス受容体 / C型レクチン |
研究概要 |
日本脳炎ウイルスは人や馬に感染し脳炎を、妊娠した豚に感染し流死産を引き起こす。ワクチンは存在するものの日本脳炎の患者数は増加を続け、また発症した場合の治療法はない。感染メカニズムや発症機構など取り組むべき課題は手付かずに近い。本研究は"日本人による日本脳炎の完全コントロールに向けて"、日本脳炎ウイルスの感染メカニズムを包括的に調べ、『感染から発症までのストーリーを臓器、細胞、分子レベルで具体化する』ことを目的とする。C型レクチンファミリーからの日本脳炎ウイルスの受容体の探索これまでの研究から、C型レクチンファミリーの中に日本脳炎ウイルスの受容体として機能しうる分子が存在することが予想された。まず各種培養細胞における日本脳炎ウイルスの増殖を調べ、ヒトB細胞由来Daudi細胞では日本脳炎ウイルスの増殖が認められないことを見出した。この細胞にC型レクチンファミリーの分子を発現させたところ、調べた中ではDC-SIGN、DC-SIGNR、LSECtin、ASGPR1分子を発現させた場合に日本脳炎ウイルスの増殖が認められるようになった。各分子発現細胞と日本脳炎ウイルスとの結合はDC-SIGNR>DC-SIGN>LSECtinの順であった(ASGPR1は未検討)。DC-SIGN、DC-SIGNRとの結合および感染はマンナンで阻害され、LSECtinを介した感染はGlcNAcb1-2Manにより阻害された。cDNA libraryからの日本脳炎ウイルスの受容体の探索改良版の高効率発現クローニング法による受容体同定を行うため、日本脳炎ウイルス株JEV/sw/Chiba/88/2002の遺伝子をクローニングし、レプリコンの作製を試みた。構造蛋白質C-prM-Eを発現するプラスミドは構築した。蛍光蛋白質Venusを組み込んだレプリコンは全長を連結させ、現在配列を確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウイルスの受容体か否かを判断する際に、そのウイルスが増殖しない細胞は非常に有力であるが、まずそのような細胞を見出すことができた。この細胞を用いることにより、手持ちのC型レクチン分子10分子のうち4分子が日本脳炎ウイルスの増殖をもたらすことを明確に知ることが出来た。LSECtin、ASGPR1分子はフラビウイルスでは受容体として機能することが知られていないものである。レプリコンの作製に若干時間を多く費やしている。cDNA libraryの探索に23年度中に取り掛かる予定であった。
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今後の研究の推進方策 |
レプリコンの核酸配列を早急に確認し、受容体探索のためのcDNA libraryの探索を開始する。すでに23年度に日本脳炎ウイルスが増殖しないDaudi細胞を見出しているので、この細胞にlibraryを導入して探索する。DC-SIGN等、ポジコンとも言える分子も見出しているので、実験系の構築に用いることで時間短縮を図る。Libraryとしては脳、肝臓、脾臓のもの等を用いる。樹状細胞、血管内皮細胞、神経系の細胞などの受容体を発現していると考えられる初代培養細胞を用い、同定された受容体各分子に対する抗体を用いることで日本脳炎ウイルスの増殖が抑制されるか検討し、各分子の重要度を知る。得られた実験結果と報告のある文献情報を基に、日本脳炎ウイルスの体内への侵入から発症するまでのウイルスの動態のストーリーを描く(分子・細胞・臓器レベルでの感染メカニズムや増殖場所、伝播方法など)。研究成果は国際的な学術雑誌にて発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初代培養細胞やcDNA libraryは高価であるので、多くはその購入にあてる。また得られた研究成果を学会や学術雑誌で発表するのにあてる。
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