昨年度までに行われた実験項目である,培養神経細胞株(SH-SY5Y細胞)におけるメチル水銀惹起MARCKSリン酸化に関わる実験および細胞内Ca動員に関わる実験について,その一部を継続して行い,これまでの結論を補強する結果が得られた. また,毒性マーカーとしてのMARCKSの有用性を検討する目的で,メチル水銀以外の重金属または過酸化水素処置によるMARCKS発現量およびリン酸化への影響を検討したところ,カドミウムおよび過酸化水素の処置によりMARCKSリン酸化の上昇傾向が観察された.一方,鉛ではMARCKS発現量/リン酸化の変化は認められず,マンガンではリン酸化の減少傾向が観察された.さらに血管内皮細胞株であるEA.hy926細胞を用いてメチル水銀処置の影響を観察したところ,細胞生存率の減少とMARCKSリン酸化の上昇傾向が観察された.以上の結果より,MARCKSが神経細胞だけでなく,他の細胞種における毒性の発現にも関与している可能性が示唆された.
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