研究課題/領域番号 |
23780302
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
竹嶋 伸之輔 独立行政法人理化学研究所, 分子ウイルス学特別研究ユニット, 基幹研究所研究員 (60342812)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 牛白血病ウイルス / 高活性型Tax変異体 |
研究概要 |
本研究の目的は高転写活性型BLV-Tax変異体発現細胞を用いた高感度BLV検出法の構築である。はじめに、野生型Tax(WT)、高活性型Tax(D247G)および低活性型Tax(S240P)をPCR法を用いて増幅し、その増幅産物を真核細胞発現用ベクター(pCAGGS)にサブクローニングした。得られたTax組換えプラスミドを、BLVLTR領域を有するレポータープラスミドpGV-BLTRと共にHeLa細胞に導入したところ、Taxの発現はTaxWT, TaxD247GおよびTaxS240Pで同程度であったが、ルシフェラーゼ法により測定した転写活性化能はD240G>WT>>S240Pであり、構築したプラスミドが有効に機能している事を確かめた。さらにTax発現の効果を調べるために、cDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、転写、シグナル伝達、細胞増殖、ストレス応答の発現誘導および免疫応答遺伝子の発現抑制が認められた。続いてウシ由来細胞23CLNに野生型Tax、高活性、低活性型Taxの3種類をそれぞれ導入して、マイクロアレイ解析で有意に変動のあった遺伝子の発現量の変化を調べたところ、免疫応答に関与する遺伝子のうちIFIT3はTaxWTで、他の変異体と比較して著しく高い応答を示していた。 本年度は、Tax発現細胞作製用プラスミドの構築に成功し、動物種の違いによりどの細胞側の因子が異なるかの解析を行った。H24年度はこの情報を基盤に細胞種を選定し、高感度にBLVを検出可能な細胞株を作製する。また本年度は、BLV感染の検出系として用いるBLV-CoCoMo-qPCRの検出感度の改良に取り組んだ。CoCoMo-qPCRではプライマーが高い縮重度を有する事に由来する難点が見いだされたため、プライマー濃度の検討やDNA量の検討、プライマー配列の再検討を通して、大幅に感度を上昇させる事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度は、高活性型Tax発現プラスミドの構築に成功し、それが有効にBLVの発現を効率的に誘導している事を確かめた。さらに、自然宿主であるウシにおいてはヒト細胞とは異なり、免疫応答に関与する遺伝子の促進が見られた事から、高感度にTax遺伝子を検出する細胞は、ウシではなく、ヒトをはじめとした異種の細胞が適している事を見いだした。これらの情報はBLV検出に最も有効な細胞の効率的な選定が可能となった。一方、検出に用いるCoCoMo-qPCRの感度の改良にも成功しており、順調な進展が見られていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度の成果により、プラスミドの構築および細胞種選定のためのルシフェラーゼ法の確立に成功した。 一方、BLV-CoCoMo-qPCRの検出感度は、H23年度に大幅な向上が見られたため、H24年度は構築された細胞を用いてBLVの高感度検出に着手する。 Tax発現により免疫応答が強く誘導されるとBLVの感染が見えにくくなる可能性があるため、IFIT3をはじめとした免疫応答遺伝子の発現を指標として、最も適した細胞株の選定を行う。具体的には、以下のように実験を進める予定である。1.様々な動物種由来の細胞種に高活性型Tax遺伝子を発現させ、ルシフェラーゼ法による転写活性化能の測定およびIFIT3の発現解析を行う。2.選定された細胞株について、Tax安定発現細胞株を作製する。3.細胞株からDNAを抽出し、CoCoMo-qPCRによりBLVの検出および定量を行う。4.乳清や血清、そして市販のワクチンや生物製剤にBLV粒子を添加し、BLVの迷入の検出試験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、細胞購入費(20万円)、細胞培養試薬購入費(30万円)、遺伝子導入試薬購入費(20万円)、プラスミド精製試薬購入費(10万円)、DNAシークエンス・PCR試薬の購入費(30万円)、リアルタイムPCR試薬購入費(30万円)、検証用生物製剤購入・輸送費(20万円)を使用予定である。
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