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2012 年度 実施状況報告書

プリオン病の病態における補体因子の役割

研究課題

研究課題/領域番号 23780303
研究機関北海道大学

研究代表者

長谷部 理絵  北海道大学, (連合)獣医学研究科, 講師 (70431335)

キーワードプリオン病 / 補体
研究概要

補体は自然免疫因子であり、病原体の感染や神経変性疾患など多種の病態で脳内に発現することが報告されている。プリオン病の患者や動物の脳でも、異常型プリオンタンパク質 (PrPSc)の沈着に一致して補体因子が検出されるが、補体因子の沈着が神経変性の原因か結果か、補体因子が反応しているのかということは明らかではなかった。申請者らはこれまで、プリオン持続感染マウス神経芽腫細胞に補体因子を添加すると補体因子が反応し、ホスファチジルセリンの細胞外膜への露出が起こることを示してきた (Virology 2012. 20: 205-213)。しかし、神経芽腫細胞は中枢神経系の神経細胞とは性質が異なるため、本研究ではマウス胎仔大脳皮質より分離した初代培養神経細胞を用いて、プリオン感染神経細胞で補体反応が起こるのか、補体反応が神経細胞にどのような影響を与えるのかを解析し、プリオン病の神経病態における補体因子の役割を明らかにすることを目的とした。プリオン感染 17 および 24 日後の神経細胞に補体を反応させると、感染17日後の神経細胞ではヨウ化プロピジウム (PI) の取り込みが継時的に増加した。感染 24 日後の神経細胞では、補体反応 6 時間後に PI の取り込みが増加したものの、24 および 48 時間後では増加しなかった。これらから、PI の取り込み増加は一過性の膜透過性の亢進であり、補体反応により細胞死は起こっていないことが示唆された。また、感染 20 日後に補体を反応させ、8 日後にウエスタンブロットによりPrPScを検出したところ、PrPSc量が減少しており、補体反応による膜透過性の変化はPrPScの増殖を抑制し、病態の進行を遅らせる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

申請時は、「補体反応はプリオン感染神経細胞に細胞死を引き起こす」という仮説を立て、それを初代培養神経細胞およびマウスモデルを用いたin vivo のプリオン感染で検証する予定であった。しかし、補体反応は初代培養神経細胞に細胞死を誘導しなかったため、in vivoでの実験を行う前に培養細胞で補体反応により起こっている現象を詳細に解析する必要があった。

今後の研究の推進方策

今年度までの結果から、補体反応により神経細胞の細胞膜の透過性が亢進し、PrPScの増殖を抑制する可能性が示唆された。今後は、プリオン感染マウスの脳に補体因子に対するshRNAを導入し、ノックダウンすることで、補体反応によるPrPSc増殖抑制効果をin vivoで検討する。アストロサイトーシスとミクログリアの活性化はプリオン病の特徴であり、病態に影響を与えると考えられている。補体反応による神経細胞の細胞膜の透過性が亢進することにより、アストロサイトおよびミクログリアがその変化を感知し、活性化する可能性が考えられる。そこで、プリオン感染神経細胞で補体が反応することにより、アストロサイトおよびミクログリアの活性化・増殖に影響を与えるかを解析する。補体反応により細胞膜の透過性が亢進した神経細胞にアストロサイトおよび/またはミクログリアを添加して共培養し、これらグリア細胞の数、形態、サイトカイン産生能、貪食能などの機能を解析し、活性化状態を評価する。また、プリオン感染マウスの脳にshRNAを導入し、in vivoで補体反応がアストロサイトおよびミクログリアの活性化に影響を与えるかを組織学的に解析する。初代培養細胞とマウスモデルの結果を総合して、補体反応による細胞膜の透過性の亢進がプリオン病の病態を抑制するか、悪化させるかを評価することにより、補体反応の制御がプリオン病の治療に応用可能かを検討する。

次年度の研究費の使用計画

平成25年5月26日~29日にカナダで行われる「Prion2013」で発表を行う予定があるため、旅費に充てる。また、in vivoの実験で使用するマウスや試薬類を購入予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] 補体反応はプリオン感染神経細胞の膜透過性を亢進させる2013

    • 著者名/発表者名
      長谷部理絵, Byron Caughey, 堀内基広
    • 学会等名
      第155回日本獣医学会学術集会
    • 発表場所
      東京大学 駒場キャンパス (東京都)
    • 年月日
      20130328-20130330
  • [学会発表] プリオン感染CD14ノックアウトマウスにおけるミクログリアの活性化とPrPScの沈着の解析2012

    • 著者名/発表者名
      長谷部理絵, 蕪木洋之, 鈴木章夫, 山崎剛士, 堀内基広
    • 学会等名
      第60回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      大阪国際会議場 (大阪府)
    • 年月日
      20121112-20121115
  • [学会発表] 抗原への二価結合により付与されるmAb132のPrPSc特異性2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木章夫, 山崎剛士, 長谷部理絵, 堀内基広
    • 学会等名
      第60回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      大阪国際会議場 (大阪府)
    • 年月日
      20121112-20121115
  • [学会発表] Distribution of PrPSc and microglial activation in brains of CD14 knockout mice infected with prions2012

    • 著者名/発表者名
      Hasebe R, Kabuki H, Suzuki A, Yamasaki T, Horiuchi M.
    • 学会等名
      Asian Pacific Prion Symposium
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      20120729-20120730
  • [学会発表] Construction of mAb132-EGFP fusion proteins as a PrPSc-specific probe.2012

    • 著者名/発表者名
      Suzuki A, Yamasaki T, Hasebe R, Horiuchi M.
    • 学会等名
      Asian Pacific Prion Symposium
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      20120729-20120730

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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