研究課題
本研究では、インフルエンザウイルスの宿主伝播における宿主レセプターの重要性を明らかにすることを目標とする。平成23年度は、インフルエンザウイルスとその感受性動物であるカモ、ニワトリ、ウズラ、マウス、ブタ、ウマ、イヌ、サルおよびヒトの全身臓器の組織切片を用いて、α2,6結合のシアル酸糖鎖を認識するレクチン、Sambucus nigra agglutinin (SNA)およびα2,3結合を認識するMaackia amurensis agglutinin (MAA)を用いて解析した。その結果、ニワトリ、ブタ、サル、ヒトの気管には主にα2,6が、マウス、ウマにはα2,3-が、ウズラ、イヌは両方が見られた。また、結腸においては、カモ、マウス、ニワトリがα2,3が、イヌではα2,6が、その他はすべて両方が発現していた。以上の成績より、ヒトと動物の全身のウイルスが感染しうるレセプターの種類と部位が明らかとなった。さらに、ウイルスを感染させたカモ、ニワトリおよびブタを用いて、ウイルス抗原の検出とレセプターを多重染色した。その結果、ニワトリにおいてはα2,6を発現する気管上皮細胞でウイルスが増殖し、カモにおいては、α2,3を発現する結腸上皮細胞で増殖していた。また、ブタでは、両方のレセプターを発現する鼻腔および肺の上皮細胞でウイルスが増殖していた。よって、カモとニワトリではインフルエンザウイルスが増殖の際に利用しているレセプター構造が異なることが明らかとなった。 さらに詳細に明らかにするため、カモとニワトリのインフルエンザウイルスを用いて、シアル酸糖鎖との結合試験を行った。その結果、どちらのウイルスもα2,3結合の糖鎖に特異性を示すが、ニワトリのウイルスは、フコシル化や硫酸化された糖鎖とよく結合した。よって、これらの違いが宿主における感染性の違いに関連していることが考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画していた計画に従い概ね順調に研究は遂行している。24年度実施予定のシアル酸レセプターの構造解析をすでに始めている。
今後の研究方策、引き続き宿主におけるシアル酸糖鎖の解析を行う。さらに、ウイルスを動物で継代することで、順化させたウイルスの機能変化を解析することにより、宿主レセプターとの関連を明らかにする。
平成23年度未使用額は、平成24年3月に卵および試薬等を購入するために、発生した。これらはすでに使用済みである。次年度は、引き続き動物実験のための動物およびインフルエンザウイルス解析のための卵および試薬を購入する。さらに、糖鎖の解析を進めるため、レクチンやヒトやサルのサンプルを共同研究先との協議のもと提供していただくための、研究打ち合わせの旅費として使用する。
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