研究課題
本研究では、インフルエンザウイルスの主要抗原であるヘマグルチニン(HA)とそのモノクローナル抗体(mAb)に焦点をあて、ウイルスがmAbからエスケープする際に起こるHA上のアミノ酸置換の特徴を計算科学的手法を用いて明らかにすることを目的としている。目的を達成するため、本年度は以下のテスト計算を行った。(1) アミノ酸置換によるHAとmAbとの相互作用および結合エネルギー変化の計算プロテイン・データ・バンク(PDB)に登録されているHA-mAb複合体のX線結晶構造(PDBコード:1eo8)を初期構造として、分子動力学シミュレーションのテスト計算を行った。結合自由エネルギーの計算にははじめ、自由エネルギー摂動法を用いたが、この方法は現在所有の計算環境においては非常に計算コストがかかることが分かった。一方、MM/PBSA法を用いた場合、結果も計算時間もreasonableであることが分かった。(2) HA-mAb複合体の初期構造の分子モデリングHA-mAb複合体のX線結晶構造が解かれていない場合、シミュレーションの初期構造を構築する必要がある。この構造を得るためのテスト計算を行った。具体的にはX線結晶構造が既に解かれているHA-mAb複合体の構造をHAとmAbに分け、それらに対してドッキングシミュレーションを行った。その結果、完全ではないものの、結晶構造を再現できることが確認できた。またHAおよびmAbのモデリング構造を構築し、同様にドッキング計算を行った。
3: やや遅れている
当初の研究計画よりやや遅れたのは、所有の計算環境では予定よりも分子動力学計算に時間がかかってしまい、FMO計算まで時間が回らなかったためである。その他は、おおむね順調である。
今年度、研究代表者の所属する研究機関では、昨年度より計算環境がはるかに整備された。したがって、昨年度遂行できなかったFMO計算をはじめに行った後、研究計画に従って研究を遂行していくことは時間的に十分可能であり、そのように進めていく予定である。
上述の通り、FMO計算を遂行する計算環境が整わなかったため、FMO計算ソフトウェアの購入が進まず、研究費の使用が次年度となった。一方で、昨年度、分子動力学計算およびドッキングシミュレーションを遂行した結果、分子動力学計算の解析用およびドッキング計算用のワークステーションを購入する必要性が出て来た。その場合、FMO計算ソフトは、最近リリースされたフリー版での対応を想定している。
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