研究課題
本研究では、インフルエンザウイルスの主要抗原であるヘマグルチニン(HA)とそのモノクローナル抗体(mAb)に焦点をあて、ウイルスがmAbからエスケープする際に起こるHA上のアミノ酸置換の特徴を明らかにすることを目的とし、アミノ酸置換に伴うHA-mAb複合体の相互作用変化を計算科学的手法により解析した。まず、結晶構造がすでに解かれているHA-mAb複合体構造を初期構造として、20ナノ秒の分子動力学計算を行い、MM/GBSA法により、HAと抗体との結合自由エネルギーを計算した。また、ウイルス学実験でエスケープ変異に観測されたアミノ酸置換を、コンピュータ上でHA-mAb複合体構造に導入し、変異型HA-mAb複合体構造を構築した。これを初期構造として、同様に20ナノ秒の分子動力学計算を行い、結合自由エネルギーを計算した。その結果、野生型と比べて変異型HAでは、mAbとの結合自由エネルギーが不安定化することが確認できた。さらに、野生型HAとmAbとの相互作用に関与する残基を調べた結果、相互作用に強く関与しているHA上のアミノ酸残基で、エスケープ変異が起きていることが分かった。また、変異型HAとmAbとの相互作用残基の解析から、変異したアミノ酸残基そのものだけではなく、変異によって周りのアミノ酸残基に影響し、相互作用が低下していることが分かった。これらの結果から、抗原抗体反応の結果生じるエスケープ変異株のアミノ酸置換を予測できる可能性が示唆された。
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