エボラウイルスはヒトを含む霊長類に対して高い致死率の出血熱を引き起こす。しかし、その高い病原性から、感染性ウイルスを用いた研究はBSL4施設内に限られており、その研究はあまり進んでいない。エボラウイルスのゲノムRNAはNP、VP30、VP35、Lとともに、転写・複製の基本単位であるヌクレオカプシドを形成する。本研究課題では、成熟型ヌクレオカプシドの構成因子であるNP、VP35、VP24に焦点を当て、エボラウイルスのヌクレオカプシド形成機構を明らかにすることを目的とした。初めに蛋白質発現系を用いて、各ウイルス蛋白質の発現量がヌクレオカプシド形成に与える影響を調べた。その結果、正常なヌクレオカプシド構造の形成には、NPとVP35の発現量比が重要であること、VP35が過剰に発現するとヌクレオカプシドが形成されないことを明らかにした。次に、クライオ電子顕微鏡法を用いて、ヌクレオカプシドの構造解析を行った。ヌクレオカプシドのらせん構造のコアを形成するのはNPであること、NPにVP24とVP35が相互作用することで成熟型ヌクレオカプシドを形成することを見出した。さらに、電子線トモグラフィー法と単粒子解析法を組み合わせて、世界で初めてヌクレオカプシドの3次元構造を高分解能で明らかにした。以上の2年間の成果から、エボラウイルスのヌクレオカプシドの構造ならびに形成機構の一端を明らかにすることができた。
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